中国、唐代初期の仏書。4巻。つぶさには『観無量寿経疏(かんむりょうじゅきょうしょ)』という。中国浄土教の祖師、善導(ぜんどう)(613―681)の主著。南朝宋(そう)代の畺良耶舎(きょうりょうやしゃ)訳『観無量寿経』に対する注釈書で、従来の諸師の試みた解釈を是(ぜ)とせず、九品(くほん)(往生極楽(おうじょうごくらく)を願う人における9種の別)はみな凡夫(ぼんぶ)であるという立場にたち、すべての人が阿弥陀仏(あみだぶつ)の本願(ほんがん)に基づく称名(しょうみょう)念仏によって、浄土に往生しうると力説した。この凡夫往生は阿弥陀仏の本願であり、この本願の聖意を釈迦(しゃか)が弟子の阿難(あなん)に託し、また諸仏がその真実を証明したことを明示し、さらに願生者(がんしょうしゃ)に安心(あんじん)・起行(きぎょう)を具足すべきことを指摘して、『観無量寿経』の本意を明らかにした。古今の諸説をただし、後世に規範を定めたという意味で、本書を「古今楷定(かいじょう)の疏(しょ)」という。「偏(ひとえ)に善導一師に依(よ)る」を標榜(ひょうぼう)した法然(ほうねん)(源空)は、本書に基づいて浄土一宗を開創し、仏教の一大展開を成し遂げた。
[藤堂恭俊]
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