日本大百科全書(ニッポニカ) 「角膜混濁」の意味・わかりやすい解説
角膜混濁
かくまくこんだく
本来、透明な組織である角膜が混濁する疾患をいう。角膜が病的状態になると、白く濁ったり、周囲から血管が入ってきたりする。この血管侵入が表層に限られている場合をパンヌスpannusという。角膜疾患、たとえば角膜ヘルペス、梅毒、角膜潰瘍(かいよう)の急性期では、角膜の一部や全体が白く濁り、また浮腫(ふしゅ)(むくみ)のある場合には角膜の厚さが増したり、表面の凹凸不正が強くなったりする。さらに、パンヌス以外にも角膜実質内に血管が侵入することもある。一般に炎症が消退するにつれ、角膜混濁は徐々に減少し、混濁の淡い角膜片雲、混濁の強い角膜白斑(はくはん)といわれるような部分的な角膜の濁りを残す。以上のような炎症性疾患のほかにも、角膜混濁をきたす疾患として、生まれつきの角膜変性をはじめ、外傷や薬物の飛入などもある。治療としては、原疾患の治療を行うが、混濁が残り視力障害の原因になる場合、エキシマレーザーによる角膜切除術や角膜移植などが行われる。
[中島 章 2024年9月17日]