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角膜移植 カクマクイショク

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デジタル大辞泉の解説

かくまく‐いしょく【角膜移植】

角膜が混濁していて視力障害のある人の角膜を切り取って、他の人の透明なものを移植する手術。

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百科事典マイペディアの解説

角膜移植【かくまくいしょく】

疾病や外傷による角膜(特に瞳孔(どうこう)領域)の混濁や変形で,視力がはなはだしく害された場合,角膜の中央部または全部を切りとり,正常な角膜と置換する手術。角膜は拒絶反応が起きにくく,成功率が高いため,これにより,ある程度視力を回復させることができる。
→関連項目移植角膜炎臓器バンク突き目

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世界大百科事典 第2版の解説

かくまくいしょく【角膜移植 corneal transplantation】

角膜がにごったり変形したために視力が低下した眼に対し,透明な角膜を置き換える手術。このとき使用する角膜は,多くの場合,アイバンクに登録していた人が死亡したときに提供される。
角膜移植の種類]
 角膜移植には,手術の方法や用いる角膜によって,次のような種類がある。まず自分自身の角膜を用いる同種自家移植と他人の角膜を用いる同種他家移植とがある。後者には,使用する角膜が死直後の新鮮角膜の場合と,冷凍保存された古い保存角膜の場合とがある。

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大辞林 第三版の解説

かくまくいしょく【角膜移植】

角膜が濁って視力障害が著しい人の眼球に、他者の透明な角膜を移植する手術。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

角膜移植
かくまくいしょく
corneal transplantation

角膜は、目の表面の黒目の部分をおおう厚さ約500マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリメートル1000分の1)の透明な組織である。目のなかに光を通す窓の役目をしているこの角膜が混濁したり、ゆがんでしまうと視力に支障をきたす。現在、角膜混濁に対してはエキシマレーザーを用いてこれを治療する方法も開発されているが、混濁が深い場合やゆがみが大きい場合には、これを新しい角膜と交換する必要がある。角膜移植は病気の角膜を透明でゆがみのない健康な角膜と置き換える手術である。この手術のために必要な角膜を確保し、安全性と質を確認して角膜移植医師へ提供する機関が眼球銀行アイバンク)である。[坪田一男]

沿革

角膜移植は1789年にペリー・ド・クァンシーG. Pellier de Quengsy(1750/51―1835)が最初に試みた。当時はカトリックの勢力が根強く、人体より眼球を摘出することができなかったので、ガラスを使って移植したところ、ただちに脱落して失敗した。ついでウサギの角膜をネコの角膜へ移植したり、ウサギからウサギへの角膜移植実験が行われた。また母親がわが子のために自分は犠牲となって一眼を移植したが、その当時は技術的に未熟であったために成功しなかった。1906年になってツィルムEduard Konrad Zirm(1863―1944)が初めて生体の角膜移植に成功したが、1922年ごろからソ連のフィラトフВладимир Петрович Филатов/Vladimir Petrovich Filatov(1875―1956)が死体角膜を使用し全層移植を行うことを試み、ついに28年に成功、画期的な発見となった。これを契機として角膜移植が急速に発展し、とくにアメリカで盛んに行われ、眼球銀行も発足した。
 当時、日本では屍体(したい)解剖保存法があって、学術研究のために死体より臓器を摘出しても差し支えないが、そのほかの目的で行うと死体損壊罪により罰せられた。眼科学者は海外の優秀な成績をしばらく静観していたが、なんとか欧米の技術に追いつきたい一念から、動物を用いた研究を重ねた。そして1949年(昭和24)11月に、岩手医科大学眼科学教授今泉亀撤(きてつ)(1907― )が日本で第1例目となる角膜移植を行い、成功させた。1956年3月には非公式の「目の銀行」が岩手医科大学に発足された。ところが、1957年10月にマスコミ報道に端を発し、今泉は死体損壊罪で検挙された。各方面からの努力もあり不起訴となったが、善意をもって行う医療行為が法の網をくぐりながら行うのは不合理であるという意見が強くなり、議員立法として「角膜移植に関する法律」が1958年(昭和33)に成立した。
 この法律は2部からなり、第1部は角膜移植のためであれば眼球を摘出しても差し支えないということと、第2部は眼球斡旋(あっせん)業、いわゆる眼球銀行の規定である。これは、日本における角膜移植医療の正式な第一歩となった。
 なお、この法律は腎(じん)移植の普及とともに1979年「角膜及び腎臓の移植に関する法律」に再編された。その後、1997年「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」の成立に伴い、「角膜及び腎臓の移植に関する法律」は廃止された。現在、角膜移植は臓器移植法に基づいて行われており、死亡した者が生存中に角膜移植のために角膜を提供する意思を書面により表示しており遺族が同意するときは、同法に基づき、脳死者からも角膜を摘出できるようになった。なお、ドナー(角膜提供者)が心臓死の場合は、生前の書面による意思表示がなくても、遺族の書面による同意があれば摘出できる。[桑原安治・坪田一男]

術前検査

角膜以外の目の組織が傷んでいると視力の回復は期待できないので、あらかじめ術前検査が必要である。
(1)細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査によって、角膜の混濁の状態をはじめ、炎症や癒着の有無、血管の侵入の有無などを調べる。
(2)眼圧測定を行い、眼圧が高ければ移植手術は行わない。眼圧が低い場合も、毛様体萎縮(いしゅく)のおそれがあるので注意を要する。
(3)緑内障負荷試験によって、緑内障になる素質のある目かどうかを調べる。角膜移植手術が大きな外傷性炎症となり、場合によって眼圧が上昇することがある。
(4)網膜電位図(ERG)は電気的反応による網膜機能の検査で、これによって角膜移植手術の可否を決める。[桑原安治・坪田一男]

角膜移植の方法

腎臓移植などでは血縁者から片方の腎臓を提供してもらい移植することも行われているが、角膜移植では基本的にドナーからのアロ角膜(他人の角膜)を移植する。ただし、近年、再生医療の進歩から、角膜の上皮に関しては、自己細胞による移植が行われることがある。これについては後述する。
 一般的な角膜移植では、直径約7.5~8.0ミリメートルの角膜中央部分をドナー眼球から採取し、これをレシピエント(受容者)に移植する。移植片は10‐0ナイロンとよばれる細い糸を用いて縫合する。この際、ドナー角膜がゆがんで乱視を発生しないようにすることが重要である。
 また、採取した角膜にすべて入れ替えるものを「全層角膜移植」というが、近年では悪い部分のみを移植する「パーツ移植」が行われるようになってきた。角膜は大きく分けて、上皮、実質、内皮に分けられる。上皮のみの移植を「角膜上皮移植」、上皮から実質の上層部のみを移植する方法を「表層角膜移植(LKP)」、角膜内皮を残して移植する方法を「深層表層角膜移植(DLKP)」という。この内皮を残す深層表層角膜移植は、拒絶反応のリスクを大幅に低下させることができるため、現在では主要な術式となりつつある。また、角膜内皮の疾患には、角膜内皮のみ移植する「角膜内皮移植(DSEK)」も近年増えている。これにより、全層移植後に起きやすい乱視のリスクが大きく低減された。患者本人の角膜を部分的にも残すことで術後の状態をより良くするこれらの技術により、角膜移植は一段と質の高い移植医療となってきている。
 術後は通常の臓器移植のようにシクロスポリン(サイクロスポリン)Aなどの免疫抑制剤は必要ない。ステロイド点眼だけで炎症を抑制する。なお、腎臓や肝臓などの移植の際には組織適合性抗原(HLA)を一致させる必要があるが、角膜移植においては必要ない。[坪田一男]

移殖に適した角膜

角膜の寿命は200年といわれているので、角膜が透明で以下に述べるような問題がなければ、近視や乱視、白内障でもドナーになれる。また、科学の進歩により内皮細胞検査が可能となったため、年齢制限もなくなった。
 角膜はHLAの一致は必要ではないが、角膜の上皮細胞、実細胞、内皮細胞のうち内皮細胞は分裂しないため、内皮細胞の数が重要となる。スペキュラマイクロスコープで測定して1平方ミリメートルあたり2000以上の細胞数を保持する角膜が移植に適した角膜と考えているアイバンクが多い。
 角膜移植に使用してはならないドナーの病気としては、原因不明の死、原因不明の中枢神経系疾患、先天性風疹(ふうしん)、肝炎(HB、HC抗原陽性)、エイズ、クロイツフェルト・ヤコブ病(伝播(でんぱ)性の神経疾患)、狂犬病、芽球性白血病、リンパ肉腫(にくしゅ)、内因性眼疾患(緑内障・虹彩(こうさい)炎・網膜芽細胞腫・前眼部悪性腫瘍(しゅよう))などがあげられる。[坪田一男]

角膜の保存

アメリカでは、1980年にMKミーディウムという角膜保存液が開発され、角膜移植は急成長を遂げた。MKミーディウムは、人工的に眼房水(目の中の水)と同じような条件を供給することによって1週間の保存を可能にする保存液である。従来の全眼球保存では24時間が限度であった。しかし摘出した眼球を強角膜片にしMKに保存すると1週間の保存が可能なため、時間的に余裕が生まれ、感染症のチェックの問題も解消し、角膜の使用率が一気に向上した。全眼球保存の場合は緊急手術が必要であったが、MKにより予定手術が可能となり、万全の体制で臨めるようになったのである。
 アメリカのアイバンク・アソシエーション・オブ・アメリカ(EBAA)が発足したのは1961年であるが、この保存法を取り入れた80年以降、急成長を遂げている。現在は、MKミーディウムより優れたオプチゾールやK‐ソルなど10日は保存できる保存液が使用され、より余裕をもった角膜の供給が行われている。
 日本でも、1990年代に入って、組織培養液を用いて角膜切片を作成し、これを保存する方法が導入された。このような方法では、通常保存期間が7~10日になるためとても有用である。しかしながら、強角膜切片保存は一部のアイバンクが行っているだけで、資金・人材などさまざまな理由により、この保存法を用いていないアイバンクも多い。[坪田一男]

再生医療と角膜移植

1999年(平成11)に坪田一男らが発表した角膜上皮の幹細胞移植の臨床報告から、角膜上皮に関しては再生医療が急速に発展してきた。患者本人に残っている角膜上皮の幹細胞を培養して上皮シートを作成し移植する。本人の角膜上皮の幹細胞が残っていない場合は、親族の幹細胞を採取して作成したり、本人の口腔粘膜の細胞を培養して移植する方法も開発されている。これにより従来では治療不可能とされた化学外傷などの眼障害などに治療の道が開けた。現在は角膜実質や内皮の再生の研究がさかんに進められている。
 また、スティーブンス-ジョンソン症候群などの重症な角膜上皮障害に関しては、涙が移植後の治癒率に大きく影響をする。よって涙腺の再生技術にも期待がされている。[坪田一男]

現況と将来への課題

角膜移植は、ただ単に角膜の透明性を維持するという考えから、術後いかに乱視をなくすか、近視遠視を引き起こさずに実用的な視力を与えられるか、というレベルまで医学水準が上がってきた。さらに深層表層角膜移植の進歩により拒絶反応のない角膜移植が可能となってきた。乱視を起こさないための方法にはさまざまなものがあるが、シングル・ランニング・スーチャーといって10‐0ナイロン糸によって連続縫合を行い、手術中および術後にこれを微調整することによって乱視を減らす方法が一般化している。また、エキシマレーザーにより屈折異常を矯正する方法も開発され(2000年1月28日厚生省認可)、移植後の視力をより高める新たな治療方法として注目されている。
 角膜移植のためには、今のところまだドナー角膜が必要である。日本においては、年間2万件の角膜移植手術が必要と推算されているが、年間の移植件数は1500眼ほどで、海外から角膜を輸入して治療するケースも増えている。
 日本では角膜移植に対する認知度は高く、移植への同意も多いものの、医療に反映されておらず、アイバンクのシステムの整備が必要とされる現状である。[坪田一男]
『坪田一男著『アイバンク ここまで進んだ角膜移植』(1992・日本評論社) ▽坪田一男著『アイバンクへの挑戦』(1997・中央公論社) ▽坪田一男著『移植医療の最新科学』(2000・講談社ブルーバックス) ▽坪田一男著『ベストじゃなければ意味がない!――最高のアイバンクの実現に奮闘する角膜専門医の記録』(2001・芳賀書店)』

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世界大百科事典内の角膜移植の言及

【アイバンク】より

…眼球銀行ともいう。角膜移植に要する角膜の提供を目的とする組織。従来日本では,解剖と同様に,死後一定時間内は眼球を摘出することが許されなかったが,1958年に〈角膜の移植に関する法律〉が制定され,死体からの摘出が特例として許されるようになり,この法律に基づき設立された。…

※「角膜移植」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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