訪問歯科診療

六訂版 家庭医学大全科 「訪問歯科診療」の解説

訪問歯科診療
(歯と歯肉の病気)

 2008年に介護保険を受けている高齢者(要介護高齢者)は450万人を超えました。そのうちの108万人は、要介護4あるいは5という重度な要介護高齢者です。車椅子やベッド上での生活を送り、ほとんど外出のできない方々です。このような高齢者の口腔内を拝見すると、数多くのむし歯が放置されていたり、入れ歯が何日も口から外されることなく装着されていたりといった状態に遭遇します。身のまわりの身体介護だけでも精一杯なのでしかたがないとは思います。

 このように歯科診療所などに通院するのは困難であるといった場合には、今までかかっていた先生の往診が患者さんにとって最も都合がよいと思いますが、訪問診療を担当する歯科医療機関は限られています。そこで、かかりつけの歯科医院や、市または区の歯科医師会の訪問歯科診療相談窓口に問い合わせをして紹介を受けてください。介護保険を受給されているのであれば、ケアマネジャーや訪問看護師さんに相談するのも方法です。

 治療内容は、義歯の作成や修理歯痛除去抜歯などです。歯科医の診断により、歯を削合したり、歯根(しこん)のなかの神経の治療など細かい処置が必要とされた場合には、何とか歯科医療機関まで搬送する手段をとって処置を受けることが望まれます。

 また、訪問診療が必要な患者さんは虚弱な方ですから、むし歯や歯周病(ししゅうびょう)のみならず誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)予防のために口腔(こうくう)ケアは必須です。歯科衛生士が行う専門的口腔ケアは、要介護状態が重度であればあるほど、介護職や家族では難しい細かいケアを成し遂げることができます。

 さらに、むせやすい、咀嚼(そしゃく)ができない、胃瘻(いろう)(胃に直接チューブをつないで栄養補給をする方法)管理で口から食事ができないといったような場合には、摂食機能(せっしょくきのう)療法としてのアプローチがあります(図66)。これについても先述したような窓口に相談されるとよいと思います。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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