内視鏡下で腹部の表面と胃壁に小さな穴(直径5~6ミリメートル程度)を開けて管を通した状態のこと。胃瘻は、嚥下(えんげ)機能の低下など、なんらかの原因で口からの十分な食事摂取がむずかしくなった人を対象に造設される。この管から栄養剤を直接胃に注入することを「胃瘻栄養法」という(胃瘻栄養法の意味で「胃瘻」ということばが用いられることもしばしばある)。また、このように体表と胃壁をつなぐ穴(瘻孔)をつくる処置を「経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)」とよぶことから、胃瘻または胃瘻栄養法のことを「PEG(ペグ)」とよぶ場合もある。
胃瘻は、体表側と胃内部ストッパーの形状の違いにより、体表側がボタンのみで管が出ておらず動きやすいボタン型、20~30センチメートルの管が出ており栄養剤の注入がしやすいチューブ型、胃の内部ストッパーの交換がしやすいバルーン型、管が抜けにくく長期間使用できるバンパー型の4種類がある。胃瘻の合併症としては、瘻孔部の感染、びらん、瘻孔周囲の皮膚の炎症がおもなものである。
鼻から胃や腸に管を挿入する栄養法(経鼻経管栄養法)と比較して、瘻孔造設術に伴う身体侵襲は大きいが、挿入後は本人の不快感がないこと、管の管理が比較的楽であることから、近年広く用いられている栄養法である。また口腔(こうくう)内に管が入っていないことから嚥下機能への影響がないため、誤嚥の危険性が高くなければ経口摂取との併用も可能である(これにより、「口から食べる」という楽しみも残されることになる)。また胃瘻をつくったからといって永久的にこの栄養法しか残されていないわけではなく、経口摂取により安全かつ十分に栄養がとれるようになれば、場合によっては胃瘻を閉じて経口摂取のみに戻ることも可能である。
[横山美樹 2022年12月12日]
近年は、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の普及により、胃瘻からの経管栄養を続ける高齢者が非常に増加している現状があるが、一方、認知症等を有する高齢者も増加するなかで、ときに本人の意思とは関係なく胃瘻栄養法が続けられることに対して倫理的な疑問が呈される状況もある。胃瘻による栄養を続けること、あるいは中止することが、本人の生命維持、延命にかかわる問題でもあるからである。したがって、胃瘻の造設にあたっては、本人の意向をふまえない安易な決定は控え、本人や家族(本人の代弁者となりうる人)、介護者や医療者がよくコミュニケーションをとり、各々が納得・合意したうえで造設の選択・決定をすることが望ましい。
[横山美樹 2022年12月12日]
…生体に栄養を補給する経路には,(1)口から飲食する,(2)胃または小腸に人工的に作った瘻孔(ろうこう)(胃瘻または腸瘻)に体外から管を挿入し,この管から栄養液を注入する,(3)血管内に挿入した管から栄養液を注入する,(4)肛門から栄養液を浣腸し,直腸で吸収させる,などの方法がある。中心静脈栄養はこの(3)に属するもので,末梢の静脈から心臓に近い静脈(中心静脈,上大静脈や下大静脈の心臓に近い部分)まで長い管を挿入し,栄養液を無菌的に注入する方法である。…
※「胃瘻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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