講談の刊行本をいう。すでに江戸時代にも講談の種(たね)本が〈実録本〉として貸本屋に持ちまわられていたが,明治期に入ると速記術とジャーナリズムの種々形態の発展にともない,明治中期以降,印刷された形での講談の発表が盛んになっていった。まず,2代松林伯円(しようりんはくえん)の世話講談《安政三組盃(みつぐみさかずき)》が1885年(明治18)に速記本となり,以後続々と講談本が刊行された。明治30年代には関西でも講談の速記本があらわれ,また,2代玉田玉秀斎(たまだぎよくしゆうさい)からポケット判講談本〈立川(たちかわ)文庫〉が生まれて,大正時代に広く親しまれた。さらに東京では雑誌《講談俱楽部》ができ,講談社の《講談全集》も好評となった。このような書き講談の進展は,昭和の大衆文学の成立・発展に強い影響を与えた。
執筆者:関山 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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