物質が熱平衡状態に置かれているとき,そのなかの分子あるいは原子のエネルギー準位 E1 と E2(E1 > E2)に分子(原子)が分布する数 N1 と N2 の比は,通常,ボルツマン分布に従う.
ここで,kはボルツマン定数,Tは絶対温度である.一方,レーザー,メーザーなどの誘導放出を利用した電磁波の増幅を行うような場合には,N1 > N2 でなければならない.このようなときは熱平衡状態ではないが,N1 と N2 の関係にボルツマン分布をそのまま適用すると,Tは負の値をとることになる.このようにして定義される負の値をもつ温度(負温度)は実際の温度ではないが,N1 > N2 であるような状態を表現するものとして用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報