日本大百科全書(ニッポニカ) 「費目予算」の意味・わかりやすい解説
費目予算
ひもくよさん
この用語はまだ学問的に定着したものではないが、一般的には支出を項目別に分けた予算をいう。大は国家から小は個々の家計に至るまで、個別経済体は収入から支出への流れのなかで、とくに各費目の支出の実算によってそれぞれの経営目的を達成するが、この実算のガイドラインとしてはまず収入に見合った予算をたて、それに沿って実算を統制していく。
たとえば、家計の費目予算はその家計の姿勢を具体的に示すが、その指標としては個々の家計の実績値と、全体の家計の実績値の平均の二つがある。前者は、自分の家計のなかでそれぞれの費目の予算を1年ないし1か月ごとの比較のなかでたてる縦の方法であるのに対し、後者は、他の家計との比較のなかでたてる横の方法である。これらの実態指標とは別に、家族や個人が人間らしく生きるため科学的あるいは理論的に必要とされる標準指標(理論指標)がある。実態指標だけでは現状肯定の気休めに陥る危険があるので、標準指標にも目を配る必要がある。
また予算における費目間のバランスもたいせつで、与えられた収入の枠内でバランスよく費目支出を最適配分することが、コンピュータによってきわめて精密に行われるようになった。それとともに費目の価値序列も考えなくてはならない。というのは、パーセント主義の最適配分は、それぞれの家計の生活の価値に基づく要求にかならずしもこたえてくれないからである。そのため統制不可費目と統制可能費目に分けることも必要である。生活上とくに重点を置きたい費目の予算をまずとってそれを使いきってしまうが、そうでない費目は予算のなかで実算をできるだけ統制して黒字を出すようにする、というようなけじめのある管理が求められる。
[今井光映]
『青木茂著『家庭経営学』(1965・柴田書店)』