日本大百科全書(ニッポニカ) 「家計簿記」の意味・わかりやすい解説
家計簿記
かけいぼき
家計運営に用いる簿記をいう。家族財産の増減、変化、および収入、支出、変化について継続的に記録し、計算するための技術ともいえる。その記録、計算に用いる帳簿が家計簿である。
[三東純子]
種類
一般(企業体など)の簿記と同じく、記録、計算上の基本的考え方や方法から、単式家計簿記と複式家計簿記とに分けられる。その違いは、たとえば現金を預金した場合、単式では「預金のための現金支出」として記帳するのにとどまり、複式では「手持ち現金の減少」と同時に「預金の増加」としてとらえ、現金と預金との両方に記録、計算する。このように単式は記帳が簡単であるが、反面、複式のような預金の増減の記録がない。したがって単式では財産の変動や収支の状態を正確にとらえることはできない。そのため、簡単でしかもより完全な折衷式の家計簿記についての研究が明治中期ごろから重ねられてきた。市販の家計簿記の多くは単式であるが、現在、煩雑な複式簿記の方式を用いなくとも、記帳決算の結果が複式の場合と同じようになるものもみられる。
[三東純子]
役割
もっとも簡単な単式の現金出納帳の場合でも、次のような役割を果たす。
(1)正確な現金出納や適切な手元現金管理のよりどころとなる。また支払いの記録が残るため、二重払いや過払い、そのほかの金銭上のトラブルを防ぐ。
(3)預金振込、自動支払、クレジットカードの利用など、現金外収支をも記録、計算することにより、生活の実態を金額的に把握し、実収入と実支出(生活費、税金、社会保険料など)の内容やバランスなどを正確にとらえることができ、結果的に家計の合理化が可能となる。
(4)現金以外の資産や負債の増減をも記録、計算すれば、財産の合理的運用、管理に役だつ。
(5)記録された家計の実態を家族に公開することにより、家族の理解と信頼関係と協力とを推進することができ、家庭教育にとっても有意義である。
[三東純子]