日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤外線分光器」の意味・わかりやすい解説
赤外線分光器
せきがいせんぶんこうき
赤外線を、その波長ごとの強度を測定して研究する装置。可視・紫外線分光器とほとんど同じ原理である、光学的に光を分解してその強度を測定する分散型分光器と、干渉計を用いて、干渉縞(かんしょうじま)のフーリエ変換によって赤外スペクトルを得る非分散型フーリエ分光器がある。
分散型分光器では、光を分解する素子として、蛍石(ほたるいし)や岩塩、KRS-5とよばれるヨウ化・臭化タリウム結晶をプリズムとして用いるものが古くから使用されていた。また、刻線の密度の違う複数枚の回折格子を交換しながら測定できる分光器も使用されている。
非分散型フーリエ分光器では、固定鏡と移動鏡からの赤外光をビームスプリッター面上で干渉させる干渉計を用いて、移動鏡の移動と同期した干渉光を光格差の関数として測定し、そのフーリエ変換によりスペクトルを得ている。電子計算機の性能向上と相まって分散型分光器にとってかわっている。この分光器では入射開口を大きくとることができるため、感度が著しく向上し、弱い光源の場合や、遠赤外領域で威力を発揮している。また、専用の赤外線顕微鏡と組み合わせて、数マイクロメートル単位の微小試料の測定も可能となっている。
[尾中龍猛]
『田中誠之・寺前紀夫著『赤外分光法』(1993・共立出版)』