光線のなかで波長の長い、とくに赤外線をよく吸収する特殊ガラスで、熱線吸収ガラス、吸熱ガラスともいう。市販品では微量のニッケル、コバルト、鉄などをガラス組成に加え、ブルー、グレー、ブロンズなどの色調を出すとともに赤外線(熱線)吸収の効果を与えている。これによって太陽光のまぶしさを防ぐと同時に、室内冷房の効率をあげることができる。日本工業規格(JIS(ジス))によれば、板厚5ミリメートルの場合、波長0.29~2.14マイクロメートルの太陽光に対する全透過率は、ブルー、グレー、ブロンズでそれぞれ70、75、75%以下と規定されている。 に無色(微量の鉄の着色あり)と赤外線吸収ガラスの分光透過率を示すが、赤外部の吸収がよくわかる。この種のものを窓ガラスとした実験例によると、太陽光がガラス面に対して45度で射し込んだ場合、室内に51~52%が透過する。しかし吸収によってガラスの温度が上がるので、それから室内への再放射分が11~12%加算される。この例は8月1日午前8時の東京で行われているが、窓ガラスの温度上昇はガラス内外の気温と風速に依存することに注意しなければならない。このガラスはカーテンウォール形式の窓ガラス面積の大きい建築物に多く用いられている。
[境野照雄]
『作花済夫・伊藤節郎・幸塚広光・肥塚隆保・田部勢津久・平尾一之・由水常雄・和田正道編『ガラスの百科事典』(2007・朝倉書店)』
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