改訂新版 世界大百科事典 「軍功書」の意味・わかりやすい解説
軍功書 (ぐんこうがき)
江戸時代,武士が合戦における武功を書き上げた文書。近世初期には,関ヶ原の戦(1600),大坂の陣(1614-15),島原の乱(1637-38)など大合戦がおこる一方,大名改易などで牢人が多数輩出した。他方,新たに譜代大名等が家臣団を拡大する中で,仕官を望む牢人は自身の武功を書き連ねた軍功書を提出して宣伝の手段とした。また,合戦に参加した大名が,家臣の武功を調査して,家臣団統制,階層序列確定の参考としたこともあった。これらの内容には誇張に富んだものも多く,その真偽を確かめるため,他藩にまで照会することもあった。だが,緊張状態が薄れ,大名が武功よりも能吏の才を必要とするようになるにつれ,武功は仕官の条件としての効果がうすれ,実戦に参加した武士がしだいに姿を消すと,これらの武功は,自家の家柄を誇る子孫によって,先祖書に記載されるようになり,さらに誇張されて各家の伝説・神話となって残っていった。
→奉公書
執筆者:根岸 茂夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報