転位行動(読み)テンイコウドウ

デジタル大辞泉 「転位行動」の意味・読み・例文・類語

てんい‐こうどう〔テンヰカウドウ〕【転位行動】

動物行動学において、ある個体が、たとえば「攻撃逃避」など相反する衝動が拮抗したときに取る、無関係な行動。闘争中の鳥が地面をつついたり、求愛中の魚が砂掘り行動をしたりするなど。人間心理学における代償行動に相当すると考えられる。

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百科事典マイペディア 「転位行動」の意味・わかりやすい解説

転位行動【てんいこうどう】

動物行動学用語。逃走接近といった相反する衝動が拮抗して葛藤状態に陥ったときに現れる行動。闘争中の鳥が突然地面をつついたり,求愛中のイトヨが急に逆立ちして水送り動作をしたりすること。人間が困ったときに頭をかくのも一種の転位行動と解釈できる。同じような状況で異なった対象に行動を行うこと,例えば,優位個体に攻撃されて,他の弱い個体を攻撃する場合は,転嫁行動と呼んで区別される。

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世界大百科事典(旧版)内の転位行動の言及

【行動】より

…トゲウオのジグザグ・ダンスはその好例で,攻撃と逃走が交互に解発されることによって生じるものである。相対立する衝動の拮抗の結果,別の対象に行動を向ける転嫁行動redirected behavior(例えば上位の個体に攻撃された個体が下位の個体に攻撃を向ける場合)やまったく別種の行動が現れる転位行動displacement behavior(例えば闘争の最中に突然餌を食べはじめるような場合)も葛藤行動に含まれる。
【行動における学習の役割】
 リリーサーと生得的解発機構はそれぞれの動物の種によって遺伝的にきまっており,それによって現れる行動を生得的行動innate behaviorと呼ぶ(従来これは本能行動instinctive behaviorと呼ばれたものであるが,本能という概念のあいまいさゆえに今日では用いられなくなった)。…

※「転位行動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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