動物行動学(読み)ドウブツコウドウガク(英語表記)ethology

翻訳|ethology

デジタル大辞泉 「動物行動学」の意味・読み・例文・類語

どうぶつ‐こうどうがく〔‐カウドウガク〕【動物行動学】

動物の行動を研究する生物学の一分野。心理学・生態学・生理学なども駆使して総合的に理解しようとするもの。エソロジー比較行動学行動生物学

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精選版 日本国語大辞典 「動物行動学」の意味・読み・例文・類語

どうぶつ‐こうどうがく‥カウドウガク【動物行動学】

  1. 〘 名詞 〙エソロジー

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改訂新版 世界大百科事典 「動物行動学」の意味・わかりやすい解説

動物行動学 (どうぶつこうどうがく)
ethology

動物の行動を研究する生物学の一分野。エソロジーとそのまま呼ばれることもあり,習性学,行動生物学,比較行動学,行動学などと記される場合もある。エソロジーということばは,I.ジョフロア・サンティレールが1859年に〈本能習性など生物の表す行動と環境の関係を研究する学問〉として提唱したのに始まる(ただしこのことば自体は,それ以前にJ.S. ミルが〈人生学〉という意味合いで使っていた)。以後,さまざまな曲折を経るが,現在では〈ダーウィン以後の近代生物学のあらゆる手法を用いて動物の行動を研究する学問〉(K.ローレンツ)というのが,最も広く受け入れられている定義である。具体的には(1)行動の観察および記載,(2)その行動のメカニズム,(3)その行動の生物学的意味すなわち機能,(4)その行動の個体発生,(5)その行動の系統発生すなわち進化,以上五つのレベルに関する研究がある。

動物の行動に関する関心はすでにアリストテレスから始まっており,彼の《動物誌》や《動物運動論》には行動に関する記述が多く見られる。アリストテレスの伝統はローマ大プリニウスの《博物誌》に引き継がれるが,以後16世紀ころまでみるべき進展はなく,18世紀以後の博物学の発展も,行動の観察,記載のレベルにとどまり,行動そのものの分析に立ち入ることはなかった。

 動物の行動の研究の歴史上きわめて大きな意義をもつのは,C.ダーウィンの登場である。ダーウィンは《種の起原》の〈本能〉の章で,動物の行動も進化の産物であり,〈精神〉や〈心〉も生物学の対象となるべきことを明確に述べ,また《人間および動物の表情》で,動物の行動に関する本格的研究を展開した。

 しかし,ダーウィンの影響を受けたローマニズG.J.Romanes(1848-98)のしごとは,ロイド・モーガンらから擬人主義であるという批判を受ける。モーガンらは客観主義の名のもとに,生物体を一つの刺激反応系とみなす動物心理学を提唱し,以後19世紀後半から20世紀にかけては,これとJ.ロエブらの反射,走性の生理学が,動物行動研究の主流となる。

 ファーブルを代表とする在野の研究者の間に伝えられた行動研究の博物学的な側面は,O.ハインロート,C.O.ホイットマン,J.S.ハクスリーらに受け継がれ,やがて1930年代から40年代にかけて,K.ローレンツによって,動物行動学の理論づけがなされる。そして1973年のローレンツ,N.ティンバーゲン,K.vonフリッシュのノーベル医学生理学賞受賞によって,自然科学としての認知を得た。ローレンツ流の動物行動学は,人間の行動の生物学的基盤を明らかにするという一面があり,ローレンツ自身やD.モリスらの著作は大きな反響を呼ぶと同時に,強い批判をも巻き起こした。

 ローレンツ以後の動物行動学は,一方で,対象を動物から人間に転じることによって人間行動学への道を歩み,もう一方で,メカニズムの追求という面から,行動の神経生理学への道を歩むという二極分化の傾向がみられる。さらに近年では,行動の進化という側面で,社会生物学的な方法を基盤とする行動生態学が急速な発展を遂げつつある。なお,1982年には日本でも動物行動学会が発足。機関誌《Journal of Ethology》を発刊し,人類学,心理学の研究者も含めて活発な活動を行っており,国際行動学会にも加わっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「動物行動学」の意味・わかりやすい解説

動物行動学
どうぶつこうどうがく
ethology

エソロジーともいう。生物学の一分野。動物の行動を研究する学問で,行動観察と資料整理の方法論,行動開発の生理的・神経的機構,行動の適応的意味,異なる種間での比較,どのような過程で進化してきたのかという問題など,多面的な研究面をもつ。この語は古く E.ジョフロア・サン=チレールがつくったが (1859) ,O.ハインロート,C.ホイットマンらを経て,20世紀中頃に K.ローレンツや N.ティンベルヘンが学問としての体系を整えた。以前は,動物を自然状態で観察し,おもに本能の問題を扱うヨーロッパ学派と,実験室内でネズミの学習を中心に研究したアメリカ学派があったが,現在は統一され,行動の生理的な機構を中心とした研究が盛んである。ローレンツ,ティンベルヘンと,ミツバチの行動研究をした K.フォン・フリッシュは 1973年度ノーベル生理学・医学賞を受けた。

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百科事典マイペディア 「動物行動学」の意味・わかりやすい解説

動物行動学【どうぶつこうどうがく】

エソロジー,行動生物学とも。動物の行動を研究する学問。K.ローレンツ,N.ティンバーゲンらによって,行動を一つの形質として総合的に研究する近代的な動物行動学が確立された。現在では行動の生理学的な基盤を研究する神経行動学,人間の行動に当てはめた人間行動学,および行動の進化生態学的な意味をさぐる行動生態学や社会生物学が主要な分科となっている。
→関連項目日高敏隆

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「動物行動学」の意味・わかりやすい解説

動物行動学
どうぶつこうどうがく

エソロジー

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世界大百科事典(旧版)内の動物行動学の言及

【ティンバーゲン】より

…49年イギリスに渡り,66年オックスフォード大学教授。動物行動学(エソロジー)の開拓者の1人として,K.フォン・フリッシュ,K.ローレンツとともに73年ノーベル医学生理学賞を受賞。主として実験的研究にすぐれ,理論のローレンツとのコンビで動物行動学を築きあげた。…

※「動物行動学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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