迎・邀(読み)むかえる

精選版 日本国語大辞典 「迎・邀」の意味・読み・例文・類語

むか・える むかへる【迎・邀】

〘他ア下一(ハ下一)〙 むか・ふ 〘他ハ下二〙 (「むかう(向)」と同語源)
① こちらに向かって来るものに対して、途中まで出かけて待ち受ける。また、用意して待つ。
万葉(8C後)八・一四三〇「去年の春逢へりし君に恋ひにてし桜の花は迎(むかへ)けらしも」
② その場に居て、自然にやって来るのを待つ。時や季節が推移してある状態がおとずれることにいう。
※後拾遺(1086)冬・四二四「都へは年とともにぞ帰るべきやがて春をもむかへがてらに〈源為善〉」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)旅立「舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて老をむかふる物は」
③ 呼んで、来るように仕向ける。呼び寄せる。また、準備をして人を待ち受ける。
源氏(1001‐14頃)浮舟「京へなど、むかへたてまつらせたらん後」
※こゝろ(1914)〈夏目漱石〉中「町から迎(ムカ)へた医者は私に斯う云った」
④ 家族の一員として呼ぶ。招いて身内とする。
書紀(720)継体即位前(前田本訓)「近江国高嶋郡三尾の別業(なりところ)より、使を遣して三国の坂(さか)中井に聘〈迎也 むかへ〉て納(めしい)れて妃(みめ)と為(し)玉ふ」
※青年(1910‐11)〈森鴎外〉九「美しい細君を迎(ムカ)へてまだ一年と立たないうちに」
⑤ 敵を待ち受けて防ぐ。
※書紀(720)欽明二三年七月(寛文版訓)「乃ち軍を進めて逆(ムカヘ)戦ふ」
⑥ 他の意向を受け入れる。自分の考え・気持などを、相手に合うようにする。迎合する。
※修辞及華文(1879)〈菊池大麓訳〉説服「詳かに聴衆の得意・嗜好・習慣を邀へ」
※今年竹(1919‐27)〈里見弴〉夏霜枯「それではなんだか先方の気持を迎へるやうでいやだし」
⑦ 二日酔をなおすために酒を飲む。迎え酒をする。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「『宿酔(もちこし)で(とむねをたたき)爰が痛うごぜへますから』〈略〉『うさアねへ、一寸おらが内へ歩びねへ、直に此横町だ、酒は相かはらず樽酒だから、些(ちっと)ばかり迎(ムケヘ)るがいい』」
[補注]室町時代ごろから「むかゆ(る)」が使われたが、その明らかな例は「むかゆ」の項にあげた。

むか・う むかふ【迎・邀】

〘他ハ下二〙 ⇒むかえる(迎)

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