追儺面(読み)ついなめん

改訂新版 世界大百科事典 「追儺面」の意味・わかりやすい解説

追儺面 (ついなめん)

追儺に用いられる仮面をいうが,古代宮中で行われた大儺(たいな)に登場して疫鬼を追う方相氏の仮面は黄金四目といわれ,これに相当する遺品は現在のところ韓国に1面知られているだけである。むしろ平安時代以降,社寺で行われた修正会(しゆしようえ),修二会(しゆにえ)の結願日に行われた鬼走りとか鬼追いの行事に用いられた数種の鬼面が,追儺面と呼ばれていることが多い。この行事に用いられたと思われる鬼面には,父・母・子の3種一組や父母一対の場合があり,鬼を追う方の竜天,毘沙門という役も鬼面と似たような表現の仮面を用いたようで,伝承された地方,系統によってかなり変化がある。遺品としては,法隆寺西円堂に伝わる父・母・子鬼の3面,福井県鯖江市加多志波(かたしば)神社同種の3面(うち母鬼は後補)などが鎌倉時代の作として著名である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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