有徳人(読み)うとくにん

  • うとくじん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

有得人とも書き,裕な人を指す。日本中世の鎌倉時代から史料に見えるもので,土倉借上酒屋などとして現れるが,他方で荘園代官,地主的名主商人,金融業者,貿易業者も相当するものが多い。その富は土地集積などの農業的な形でなく,貨幣経済の発展に乗って商業高利貸活動の結果蓄えたり,室町幕府諸大名公家寺社の財政運営にかかわって得たもので,有徳の徳は財貨・米穀といった動産的な富を指している。室町幕府は年貢収取が思うようにならなくなると,彼らに有徳銭という課税をして財政難を切り抜けようとした。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉の解説

富裕な人。金持ち。分限者(ぶげんしゃ)。うとくにん。
「もとより長は、海道一の―」〈・当流小栗判官〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディアの解説

〈有得人〉とも記され,〈うとくじん〉とも読む。鎌倉時代後期から江戸時代まで用いられた語で,富裕な人を意味する。《沙石集(しゃせきしゅう)》の説話などから,領主・農民ではなく,凡下(ぼんげ)身分の借上(かしあげ)・土倉(どそう)・酒屋など,貨幣経済の進展の中で財を蓄えた商人・金融業者を指すことがわかる。成金的色彩が強い。現世利益や滅罪・懺悔のためか,社寺などに莫大な寄進をした例もままみられる。
→関連項目有徳銭

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

富裕な人のこと。「うとくじん」とも読み、有得人とも書く。有徳の徳は、資財、銭貨、米穀など動産的富をさす。有徳ということばが史料に現れるのは、鎌倉時代からであるが、富裕な人の呼称として定着するのは、室町時代である。当時は普通、有徳人といわれたのは、都市の土倉(どそう)と酒屋に代表される非農業的、非領主的な富裕者で、身分も凡下(ぼんげ)であった。彼らは、荘園(しょうえん)の代官、地主的名主、商人、金融業者、貿易業者など、貨幣経済とともに現れた階層で、商業や高利貸活動はもちろんのこと、幕府、諸大名、さらには公家(くげ)、寺社の財政にまで深く食い込み、また日明(にちみん)・日朝貿易を事実上掌握した。
 室町幕府はその経済的基礎である、直轄領に対する支配権が失われ、年貢が減少すると、有徳銭という名称で、彼らに課税した。有徳銭は、幕府の貴重な財源となり、初めは臨時の賦課であったものが、やがて恒久的な性格を帯びるようになった。[清水久夫]
『佐々木銀弥著『日本の歴史13・室町幕府』(1975・小学館)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 富裕な人。金持ち。有徳者。うとくにん。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※評判記・色道大鏡(1678)四「都鄙にかくれなき有徳人(ウトクジン)の親の家督をとりたるが」
※虎明本狂言・三人長者(室町末‐近世初)「三人の長者のうとくにん」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

アルコール依存症

飲酒によって一時的に、不安や緊張感、気分の落ち込みなどが緩和されるが、次第に飲まずにはいられない精神状態になり、同じような酔いを得るための飲酒量が増大していく(耐性)。身に付いてしまった大量頻繁な飲酒...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

有徳人の関連情報