内科学 第10版 「運動失調のみかた」の解説
運動失調のみかた(神経疾患患者のみかた)
運動失調(ataxia)は小脳性と深部感覚障害性に大別される.
小脳性運動失調は小脳半球の障害による四肢の協調運動障害と,虫部の障害による起立・歩行の障害に分けられる.協調運動障害を評価するには,上肢では指鼻試験,下肢では踵膝試験を行い,運動の分解(decomposition)や測定異常の有無を確かめる.また手首の回内・回外を急速に繰り返すなどの反復拮抗運動を行うと,スピードが遅く,リズムも不規則となる反復拮抗運動不能症(adiadochokinesis)がみられる.上肢を強く屈曲させて,験者が急に支えを外すと,被験者の上肢が跳ね上がるリバウンド現象もみられる.小脳性の起立歩行障害では,歩幅が拡がり,歩行は不安定で酩酊様となる.小脳は適応制御の中枢であるが,適応制御系の機能障害を直接評価できる方法は,いまだ確立されていない. 深部感覚障害性の失調症では,視覚による代償が働いている場合は,症状は目立たないが,閉眼すると失調症状が明らかになる.閉眼して上肢を前方に挙上すると,指先が不規則に動揺する偽性アテトーシス(piano-playing finger)がみられる.歩行は足を必要以上に高く引き上げ,前方に放り出すような歩き方になる.[西澤正豊]
■文献
水澤英洋,宇川義一編著:神経診察:実際とその意義,中外医学社,東京,2011.水野義邦編:神経内科ハンドブック 鑑別診断と治療 第4版,医学書院,東京,2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報