日本大百科全書(ニッポニカ) 「過栄養湖」の意味・わかりやすい解説
過栄養湖
かえいようこ
本来は富栄養湖として分類されるが、人間活動の影響により極端に富栄養化の進んだ湖。夏期、「水の華(はな)」現象とよばれる植物プランクトンの大量発生が常習化し、水質および生物相が時間的にも、季節的にも激しく変動する。夏期表層の溶存酸素量は過飽和状態となるが、底層には貧酸素層、ときには無酸素層が形成され、魚貝類の大量死がおこることもある。基礎生産力がきわめて高いので、魚類の生産力も高いが、数種の魚種で漁獲量の大半を占めるなど、生物多様性が減退する。水中の栄養塩濃度がきわめて高いばかりでなく、湖外から連続的に多量の栄養塩が供給されることに原因がある。
「水の華」の構成生物は藍藻(らんそう)類のミクロキスティス(ミクロシスティス)属が主であるが、このほかに、アナベナ属、アファノカプサ属、オッシラトリア属などが報告されている。動物プランクトンではワムシ類が春秋に優占し、底生生物のユスリカ幼虫が大量に生息している。その羽化期には成虫が湖周辺の灯火に誘われ、大きな蚊柱をつくることがある。
[沖野外輝夫]
『飯田貞夫著『やさしい陸水学――地下水・河川・湖沼の環境』(1997・文化書房博文社)』▽『宝月欣二著『湖沼生物の生態学――富栄養化と人の生活にふれて』(1998・共立出版)』▽『沖野外輝夫著『湖沼の生態学』(2002・共立出版)』