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栄養塩類 えいようえんるいnutrient salts

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

栄養塩類
えいようえんるい
nutrient salts

植物性プランクトンや海藻などの植物体をつくるのに不可欠なケイ素,リン,窒素などの元素は海水中でそれぞれおもにケイ酸塩リン酸塩,硝酸塩として溶存している。これらの無機塩類栄養塩類という。栄養塩は海の肥料の働きをし,植物プランクトンを養い,これを餌とする動物プランクトン,さらにそれを餌とする魚がふえるという食物連鎖の基本をなす。動植物は死後分解して栄養塩として海水に溶け込み,上層から下層へ沈降するため,深層は栄養塩類の大きな貯蔵庫となっている。一般に栄養塩は沿岸水に多く,外洋水に少い。これは栄養塩を多く含んだ陸水が沿岸に流入するためである。しかし外洋においても礁や海山など海底に隆起部のあるところでは湧昇流が存在し,これが深層の栄養塩を上層に運び海水の肥沃化をもたらし,よい漁場をつくる。またカリフォルニア沿岸や,ペルー沿岸においては海水の沿岸湧昇の結果,一大漁場が発達している。さらに冬季における海水の鉛直対流も深層から上層に栄養塩類を運ぶ働きをするので,浅い海や,密度成層の弱い海では栄養塩は上層で比較的豊富になる。しかし栄養塩類が過剰な状態になると,特定プランクトンを大増殖させ,赤潮など2次汚濁の原因になる。食品工業からの排水,家庭排水,下水道処理水,肥料散布などが陸水での主要な発生源である。家庭用中性洗剤も,緩衝剤のリン酸塩が問題とされている。いずれも自然,または生物的処理法では除去がむずかしく,対策として,下水道の3次処理など浄化施設の設置が必要である。また各発生源からの排出量削減義務づけなどが実施され (瀬戸内海) ,あるいは総量規制の対象としても検討されている。 (→富栄養化 )  

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世界大百科事典 第2版の解説

えいようえんるい【栄養塩類 nutrient salts】

生物が正常な生活を営むのに必要な塩類といった栄養分とか栄養素の意味で用いられることもあるが,栄養塩とか栄養塩類という語は一般に海洋学陸水学の分野で用いられ,植物プランクトンや海藻などの藻類の増殖を助長する物質をいう。藻類の要求する元素は陸上植物のそれと基本的には変わらず,水素,炭素,窒素,酸素,リン,硫黄,カリウム,カルシウム,マグネシウム,鉄,マンガン,銅,亜鉛,モリブデン,塩素およびケイ藻の殻の成分であるケイ素などである。

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大辞林 第三版の解説

えいようえんるい【栄養塩類】

生物の正常な生育に必要な塩類。
海水や陸水に含まれ、植物プランクトンや藻類の栄養になる物質。硝酸塩・亜硝酸塩・アンモニウム塩・リン酸塩・ケイ酸塩など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

栄養塩類
えいようえんるい
nutrient salts

海水中に溶存するリン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、アンモニウム塩、ケイ酸塩などの塩類を総称していう名称。栄養塩ともいう。植物プランクトンや海藻類が増殖するための栄養源として利用するのでこの名がある。海面近くの光の届く層では、植物プランクトンが太陽光と炭酸物質や栄養塩を利用して、光合成作用によって増殖する。これが海洋の食物生産機構の基礎をなしている。
 栄養塩類の濃度分布は、空間的にも季節的にも変動が大きい。一般に表層では、生物によって摂取されるため濃度が低い。極端に濃度が低い場合には、リンまたは窒素が不足して生物増殖の制限因子となることがある。栄養塩濃度は深さとともに急増し、ある深さで極大となる。これは、海洋生物の遺骸(いがい)が沈降しながら分解し、ふたたび栄養塩を海水中に溶出させる再生作用のためである。表層の地理的分布では、濃度は高緯度の冷水域で高く、低・中緯度の暖水域で低い。季節的には夏季に低く、冬季に高い。これは、春季のプランクトンの大増殖による栄養塩の消費と、冬季の海水の鉛直混合による深層から表層への栄養塩の補給によるものと考えられている。このように栄養塩の濃度や分布のパターンを決定する要因には、海洋中の生物作用と海水の混合過程が関与している。[秋山 勉]

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