日本大百科全書(ニッポニカ) 「部分社会」の意味・わかりやすい解説
部分社会
ぶぶんしゃかい
partial society
全体社会に対する概念。全体社会が相対的に大規模で自己完結性をもった包括的な社会(国民社会のような)であるのに対して、部分社会は全体社会のなかに包摂されていてその構成要素をなしている。その具体的な例として、国家、都道府県や市町村、政党、教団、学派、組合、会社、クラブなどがあげられ、これら諸部分社会が複雑な形で組み合わせられて全体社会を構築している。これらの部分社会は全体社会のなかで複雑な相互関係をなしているため、ある部分社会でなんらかの変化が生じると、それは必然的に他の部分社会にも影響し、そこに一定の変化を結果する。なお、部分社会と部分社会との間にはかならずしも直接的な関係が取り結ばれているわけではないが、第一に、国家という部分社会が他の諸部分社会に対して支配的な地位を占めて全体を統合していること、第二に、部分社会に分属する個人が要(かなめ)になって各部分社会の間に一定の調和をもたらしていることによって、部分社会間の関係と全体社会の調和が保たれている。
以上は高田保馬(やすま)によって提起された部分社会概念だが、機能主義的社会概念のなかで部分社会システムというときには、自足的完結体としての全体社会システムのなかでその機能的下位システムをなしているもの、あるいはシステム存続に不可欠な機能的要件をそれ自体では充足していないシステムのことをいう。
[石川晃弘]
『高田保馬著『改訂社会学概論』(1950・岩波書店)』