酔翁談録(読み)すいおうだんろく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「酔翁談録」の意味・わかりやすい解説

酔翁談録
すいおうだんろく

中国、唐宋(とうそう)の伝奇小説、雑文、および遊戯的文章を集めた類書の一種。江西省吉安の人羅燁(らよう)の手になる。『緑窗新話(りょくそうしんわ)』とともに、宋代説話人(講釈師)の種本の一つと推定されている。とくにその「小説開闢(かいびゃく)」の一編は、当時の小説(講釈の一種)の名目を霊怪、煙粉、伝奇、公案、朴刀(ぼくとう)、桿棒(かんぼう)、神仙妖術(ようじゅつ)の8類107種にわたってあげており、宋代の俗文学、初期白話(はくわ)小説研究の貴重な資料ともなっている。羅燁の伝は未詳であるが、書中元(げん)人のことに触れる部分がある。『適園叢書(そうしょ)』に収められる金盈之(きんえいし)の同題の書とは別書。わが国の伊達(だて)家観瀾閣(かんらんかく)より発見された元初の版が現在天理図書館に所蔵される。1959年(昭和34)国の重要文化財指定を受けた。影印本がある。

[大塚秀高]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酔翁談録」の意味・わかりやすい解説

酔翁談録
すいおうだんろく
Zui-weng tan-lu

中国,宋の随筆雑録。羅ようの著。 10集,20巻。著者経歴は未詳。物語,逸話,笑話,詩歌など,多く前人の作を寄せ集めたもの。作品的価値は少いが,当時の民間文芸に関する記録,特に都市で流行した講談およびそのテキスト題材によって分類し,代表的な題名をあげているのが,小説史研究上重要な資料となっている。原本は日本の伊達家文庫から初めて発見された。ほかに宋の金盈之 (きんえいし) の著として同名の8巻の書があり,やはり逸話や史実を記載するが,まったく別書である。

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