日本大百科全書(ニッポニカ) 「野国総管」の意味・わかりやすい解説
野国総管
のぐにそうかん
生没年不詳。総官とも書く。沖縄に初めて蕃薯(ばんしょ)(サツマイモ)をもたらした人物。「総管」とは沖縄(琉球(りゅうきゅう))から中国に派遣される進貢船の役職名で、「野国」は沖縄本島中部北谷間切(ちゃたんまぎり)(嘉手納(かでな)町)の村名であるから、野国総管は厳密な意味での人名ではない。1604年ごろ、進貢船の一員(総管)として中国福建省に赴いた彼は、かの地で蕃薯を得て鉢植えにして持ち帰った。これを知った儀間真常(ぎましんじょう)は、野国に会って蕃薯の栽培法を習い、これを沖縄中に広めた。五穀を補う食糧として大きな役割を果たすことになったが、やがて鹿児島に伝わり全国へと普及する。沖縄では唐芋(とういも)、鹿児島ではカライモ、全国的にはサツマイモの名でよばれるが、この点に伝播(でんぱ)の歴史が象徴されているといえよう。嘉手納町には野国の墓があり、その前面に顕彰碑「総官野国由来記」(1751)が建立されている。
[高良倉吉]