日本大百科全書(ニッポニカ) 「金モール・銀モール」の意味・わかりやすい解説
金モール・銀モール
きんもーるぎんもーる
モールmoleとは、金・銀糸、針金、綿糸などを芯(しん)にして、絹糸あるいはレーヨン糸を絡み付かせた線状あるいはひょうたん状をした紐(ひも)。手芸、玩具(がんぐ)、服飾、とくに肩章、襟章、礼装の付属品に使用される。金・銀箔(ぱく)を和紙に漆で固着させ、細く裁断したものを、芯糸に巻き付けた飾り糸、あるいは金めっきした代用品をさすことがある。このモール糸を使い、これを製織中に絵緯(えぬき)糸として打ち込み、模様を表した織物をモール織とよび、その使用によって金・銀モールとよぶことがある。また、モール織の「モール」は、16世紀のころからインドのムガル王朝でつくられた紋織物ムガルmogulの訛(なま)りで、金銀糸を平織地に織り込んだものである。わが国ではすでに古墳時代後期に出土するが、むしろ近世にオランダよりインド産のものが伝えられ、江戸末期には国産化され、帯地などがつくられた。
[角山幸洋]