手芸(読み)シュゲイ

デジタル大辞泉 「手芸」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐げい【手芸】

手先でする技芸刺繍ししゅう編物人形作りなど。「手芸品」
[類語]仕立て裁縫縫い物針仕事繕い物編み物刺繍

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精選版 日本国語大辞典 「手芸」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐げい【手芸】

  1. 〘 名詞 〙 手先を特に使ってする技芸。刺繍(ししゅう)、編物、摘細工、絽刺(ろざし)、綴錦、描更紗(かきざらさ)袋物細工などの類。
    1. [初出の実例]「手芸(シュゲイ)口術の道々まで、士農工商の家業を整なへ、詩歌連俳の風雅に遊ぶ」(出典:俳諧・俳諧古今抄(1730)上)
    2. 「ミシンや手芸の仕事にいそしむ」(出典:自由学校(1950)〈獅子文六〉触手)
    3. [その他の文献]〔柳宗元‐梓人伝〕

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改訂新版 世界大百科事典 「手芸」の意味・わかりやすい解説

手芸 (しゅげい)

一般には家庭内で布や糸,針などを用い手作業によって加工,加飾を行い,室内装飾品や衣服などの装飾品を製作することをいう。手わざ,手仕事,手工,手技(伎),技芸,マニュアル・アートmanual art,ハンディクラフトhandicraft,ハンディワークhandiworkなどの呼称がある。手芸の技術には多くの種類があるが,表現の形態から二つのタイプに分けられる。まず,その技術で物の形が加工されるものを独立手芸と呼び,織物,編物(レース類を含む),袋物細工物(皮革,ビーズ押絵つまみ(摘)細工),造花,人形細工などが含まれる。一方,作品の一部にその技法を用いるものを付随手芸と呼び,刺繡キャンバス・ワークドロン・ワークカットワークアップリケスモッキングキルティングなどを含む),染色などがあげられる。前者は作品の加工美を,後者は加飾美を追究,表現する技術である。なお,個々の技術についてはそれぞれの項目を参照されたい。

 手芸の技術は,基本的には他の工芸と同じく人類の歴史とともに古くから行われて,各民族の間に伝承,保持されてきたが,おもに繊維製品であるため古い遺存例に乏しい。今日わかっている最古の例は,エジプトで発見された前3000年ころのビーズ刺繡である。またパッチワークやアップリケを使用した前1000年ころの天幕も発見されている。これらは神官の宗教的権威や王・貴族の世俗的権威を高めるために用いられたものであろう。刺繡は古代オリエントでとくに発達し,当時の浮彫人物像に見ることができるが,この刺繡技術はビザンティン帝国にもたらされ,キリスト教の祭式と結びついて独自の発展を示した。豪奢(ごうしや)な材料を用い,精緻なデザインを施した式服や祭壇装飾が作られ,王侯貴族はその権威を誇るため豪華な刺繡を施した衣服を作った。また貴婦人たちは教養の一部として刺繡技術を習得するようになった。やがて刺繡職人のギルドが結成され,教会に専有されていた技術が民間にも普及しはじめた。一方,古代オリエントの刺繡技術は,イスラム文化を経て東ヨーロッパ,北ヨーロッパに移入され,各地の土着の手芸技術に影響を与え,地域的・民族的特色をもつ手芸をはぐくんだ。1200年ころには糸抜き細工のドロン・ワークが起こり,1300年ころには白糸刺繡も生み出された。

 近世に入ると,ヨーロッパは服飾手芸の最盛期を迎え,たびたびの奢侈(しやし)禁止令にもかかわらず,上流階級は豪華な装飾を競いあった。そのような時勢を背景に黒糸刺繡,カットワークなどの新技法が起こり,一般家庭にも普及して趣味の手芸が盛んになった。1500年代には刺繡のパターン・ブックが発行され,1600-1700年代には1枚の布にさまざまなモティーフを幾種類ものステッチで刺した刺繡のサンプラーが愛用された。16世紀半ばにはベネチアで今日見るようなレースが考案され,フランス,ベルギーをはじめヨーロッパ全域に普及し,各地で独特のレースを生み出した。アメリカ大陸では17世紀末に端ぎれをはり合わせて作るパッチワークの技法が盛んになった。服装の簡素化をもたらしたフランス革命の影響によってヨーロッパ大陸の伝統手芸は急速に衰え,またイギリスでも産業革命の勃興とともに手作り品は機械生産品との競争に敗れ,衰微していった。伝統技術の衰微を憂えたW.モリスはその保存を図る運動を起こし,王立刺繡学校設立の機運をつくった。

 日本で手芸という言葉が使われたのは明治以降で,それ以前にはつまみ細工,押絵,袋物などが細工物と呼ばれて女子の教養の一部として盛んに行われていた。しかし欧米からさまざまな手芸技法が伝えられてからは,それらの日本古来の手芸は少なくなった。現在ではレース,編物をはじめほとんどの手芸技術が産業化され,衣服の既製品化とともに刺繡などの加飾も機械で行われるようになっているが,新しい技術,手法も生み出されて趣味の手芸として生きつづけている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「手芸」の意味・わかりやすい解説

手芸
しゅげい

刺しゅうや編物など、手先でする技芸をいう。

[市川久美子]

歴史

手芸は、人類の日常生活の必要性から自然発生的におこったはずで、これはほかの工芸と同じである。衣服の補強や修理に端を発し、動物や魚類の骨を針として用い、布の両端を縫い合わせたり、2枚に重ねたりすることから始まった。また、皮革の端を切ってフリンジをつくったり、残り布を細かく切って糸状にし、編んだり結んだりして用いた。古代エジプトやバビロニアなどで行われていたことは、その発掘物から推察することができる。

 日本の手芸が学校教育(尋常小学校)に取り入れられたのは1872年(明治5)学制頒布のときであるが、女学校では1870年に横浜の現在のフェリス女学院が西洋刺しゅう、西洋編物を教授したのが始まりである。当時は裁縫(和服)が重要な部分を占めていた。手芸が教科として、またその一部分として明示されたのは1895年のことで、このとき西洋手芸も課するようになった。やがて服装が洋風化したことによって手芸の内容も変化し、第二次世界大戦後、洋裁学校が増加し、1976年(昭和51)から洋裁専門学校の設立も増え、服飾手芸が洋裁教育に取り入れられている。また現在では一般教育でも、小学校から家庭科教育の一環としてカリキュラムに組まれており、専門科目として短期大学や大学の家政学部教育にも及んでいる。

[市川久美子]

種類

刺しゅう、編物、染色、レース、造花、ビーズ、織物、製帽、皮革手芸、木の実手芸、竹手芸、糸手芸、紐(ひも)手芸、人形手芸、袋物、縫いぐるみなどがあるが、大別すると二つに分けられる。

(1)服飾手芸 被服構成には欠かすことのできない重要な役割をもち、衣服にアクセントをつける。種々の刺しゅう、レースなど編む技法を用いることも多い。衣服に用いることもできる。

(2)室内装飾手芸 室内空間を種々の手芸の技法によって装飾する場合と、テーブルクロスなどのように実用と装飾とを併用した装飾とがある。

 服飾手芸、室内装飾手芸とも、場合によっては機械でつくられたものと結び付きながら、手芸品はもっとも審美的な生活芸術として存在し続けている。

[市川久美子]

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普及版 字通 「手芸」の読み・字形・画数・意味

【手芸】しゆげい

手の技能。唐・柳宗元〔梓人(しじん)伝〕余(われ)圜(くわんし)して大いに(おどろ)き、~じて曰く、彼(かれ)は將(は)た其の手てて、其の心智を專らにし、而(すなは)ち能く其の體を知るなるか。

字通「手」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「手芸」の意味・わかりやすい解説

手芸
しゅげい
handicrafts

大量生産を目的とせず,装飾的効果や個人的趣味性を重んじる手先の技芸。刺繍,編物,織物,染色,人形,袋物,造花などが含まれる。一般に時間的な制約や経済性を度外視するため,その時代の最新の手法によらないで,比較的初歩的な用具類だけを用いる場合が多い。多くは家庭で行われるが,これを職業とする専門家もいる。

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