釣狐物(読み)つりぎつねもの

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「釣狐物」の意味・わかりやすい解説

釣狐物
つりぎつねもの

日本舞踊,音楽の分類名称。能狂言釣狐』を歌舞伎舞踊化したもの,またはそれに関連する三味線音楽。寛文以来『こんくわい (こんかい) 』『狐釣』などの名で行われ,右近源左衛門なども舞い,その他元禄の歌舞伎狂言にも取入れられた。古浄瑠璃の『信田妻』系の『こんくわい』は,『松の葉』『松の落葉』などに記され,地歌として伝えられるものもあるほか,信田妻と釣狐とを結びつけたものが半太夫節以下に行われる。また,曾我の対面と結びつけた「釣狐の対面」は1世中村仲蔵の明和7 (1770) 年江戸中村座の『鏡池俤 (おもかげ) 曾我』以来であるが,それを常磐津舞踊化したものが残っている。また朝比奈と結びついたものは「朝比奈の釣狐」という。 (1) 地歌『こんかい』 岸野次郎三郎作曲,多門庄左衛門作詞。『松の葉』収載。三下り端歌,芝居歌物。 (2) 半太夫節『神刀小鍛冶初午参 (はつうままいり) 』5段目。 (3) 河東節『信田妻釣狐之段』 (2) を独立させたもの。なお,嘉永6 (1853) 年9世十寸見河東が編曲,1世宇治紫文斎作曲の一中節との掛合に改曲。 (4) 常磐津節『寄罠娼釣髭 (てくだのわなきゃつのつりひげ) 』 通称朝比奈釣狐』。文政8 (25) 年江戸中村座初演。2世桜田治助作詞,岸沢仲助作曲。 (5) 常磐津節『若木花容彩四季 (すがたのさいしき) 』 天保9 (38) 年江戸市村座初演。中村重助作詞,5世岸沢式佐作曲。 (6) 常磐津節『余波五色花魁香 (おんなごりごしきのはなかご) 』 俗称『郭釣狐』。嘉永2 (49) 年江戸市村座初演。3世桜田治助作詞,5世岸沢式佐作曲。 (7) 常磐津節『釣狐郭掛罠 (さとのかけわな) 』  1892年東京歌舞伎座初演。右田寅彦,河竹新七作詞,6世岸沢式佐作曲。 (8) 長唄『釣狐春乱菊』 明和7年の仲蔵所演のものの改訂か。名古屋に伝わる。

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