掛合(読み)かけあい

改訂新版 世界大百科事典 「掛合」の意味・わかりやすい解説

掛合 (かけあい)

(1)能の用語。謡事の一種で,役と役(まれに地謡)が交互に謡う韻文の楽曲。リズムは地拍子の法則に合わない。シテワキなど対立する役の場合は,お互いがしだいに高潮していくような謡い口で1句1句テンポを詰めて謡われる。〈問答〉の後に置かれることが多いが,その推移が自然で,明確に分けにくい例もある。
執筆者:(2)邦楽の演奏形式。歌舞伎舞踊では地方(じかた)の音楽が2種合同で交互に演奏することをいう。長唄と竹本,長唄と常磐津,長唄と清元などの例があり,また長唄と他の2種を合わせてのいわゆる三方掛合(さんぽうかけあい)などもある。昭和半ばからは,それぞれの音曲の芸質,音程などが変化したので,演じにくくなっている。なお義太夫節には,《妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)》の〈山の段〉のように,義太夫節自体が上手と下手の床(ゆか)に分かれて演じられる掛合がある。義太夫以外の掛合でも,2種の音曲は上手と下手に分かれて演じるのが普通である。このほか,地歌,箏曲の手事を合奏するとき,本手と替手が同旋律や対句的旋律を交互に演奏することをいう。三味線どうし,三味線と箏,あるいはそのいずれかと尺八の掛合などがある。また民俗芸能,寄席芸能などに掛合があり,前者古代歌垣(うたがき)の掛合のなごりである。また後者万歳の掛合の影響で,漫才母体となった。
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掛合 (かけや)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「掛合」の意味・わかりやすい解説

掛合
かけや

島根県中東部、飯石郡(いいしぐん)にあった旧町名(掛合町(まち))。現在は雲南市(うんなんし)の西部を占める地区。1951年(昭和26)町制施行。1955年波多村と合併。2004年(平成16)大東(だいとう)町、加茂(かも)町、木次(きすき)町、三刀屋(みとや)町、吉田(よしだ)村と合併、雲南市となる。旧町域は、三刀屋川が北流し、川に沿って国道54号が通じる。山間地で耕地面積は町域の10%弱で零細農家が多い。タバコ、養蚕、酪農などによる現金収入の増加を図ってきた。過疎化が悩みとなっているが、土地や機械施設の共同利用などにより農業の活性化を推進。製造業、サービス業の雇用が多い。郷土芸能に掛合太鼓がある。三刀屋川上流の八重滝や竜頭(りゅうずが)滝は竜頭八重滝県立自然公園の一部で、「日本の滝百選」に選ばれている。

[小松 聰]


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百科事典マイペディア 「掛合」の意味・わかりやすい解説

掛合[町]【かけや】

島根県東部,飯石(いいし)郡の旧町。三刀屋(みとや)川の上流域を占め,国道54号線が通じる。零細農家が多く,米,和牛,クリ,シイタケ,葉タバコなどを産し,養蚕も行う。人工造林や工場誘致が進められている。2004年11月大原郡大東町,加茂町,木次町,飯石郡三刀屋町,吉田村と合併し市制,雲南市となる。109.50km2。3965人(2003)。

掛合【かけあい】

日本音楽用語。交互に演奏すること。能で2人以上の登場人物が節のついた韻文を応答する部分,三味線音楽で1楽曲を2つ以上の異なる種目で交互に演奏する場合,合奏で異なる楽器またはパート間で細かく交互演奏する場合などをいう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「掛合」の意味・わかりやすい解説

掛合
かけや

島根県東部,雲南市南西部の旧町域。斐伊川の支流三刀屋川上流域にある。 1951年町制。 1955年波多村と合体。 2004年大東町,加茂町,木次町,三刀屋町,吉田村の5町村と合体して雲南市となった。大部分が山地で,かつては炭の特産地として知られ,現在は米作,畜産が行なわれる。西部に三瓶山東口道路が通じ,滝谷川の竜頭滝と民谷川の八重滝付近は竜頭八重滝県立自然公園に属する。

掛合
かけあい

日本音楽,演劇用語。 (1) 能の構成部分名称 節 (ふし) のついた韻文で2人以上の役が応対する部分をいい,その各役のせりふに相当して分けられる場合と,ただ振分けた場合とがある。ときには韻文のコトバが入り,問答から切れ目なしに掛合に移ることが多い。 (2) 三味線音楽の演出形式 (a) 異なる流派,種目が共同で同一楽曲を交互に演奏すること。 (b) 同等の位置にある演奏者が2組以上に分れて交互演奏すること。 (3) 地歌箏曲の演出形式 異なる楽器またはパートが,同一または類似あるいは対句的旋律を交互演奏すること。 (4) 民俗芸能で,2人または2組で歌や言葉を交互に歌ったり言ったりすること。

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世界大百科事典(旧版)内の掛合の言及

【手事】より

…また,前後に導入部(序・マクラ)と終結部(チラシ)のいずれかまたは双方が付されることもある。地歌三弦曲に箏が合奏されることが進んで,箏の変奏度が高まるにつれて,三弦と箏とが交互演奏を行う掛合(かけあい)の技法が発達した。この掛合を含む部分を本来の手事(本手事)として,それに続く部分でいったん終結部に近い気分を示すが,しかし,再び掛合も出てくる部分を,中チラシといい,その後の本当の終結部を本チラシまたは後(のち∥あと)チラシといった。…

※「掛合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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