鉄ミョウバン(読み)てつみょうばん(英語表記)iron alum

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄ミョウバン」の意味・わかりやすい解説

鉄ミョウバン
てつみょうばん
iron alum

鉄を含むミョウバン、すなわちMFe(SO4)2・12H2O(Mは一価陽イオン)で表される複塩総称であるが、通常はM+がカリウムイオンK+の場合、すなわちカリウム鉄ミョウバンpotassium iron alumをさす。しかし、化学工業方面ではM+がアンモニウムイオンNH4+の場合、すなわちアンモニウム鉄ミョウバンammonium iron alumをいうことが多い。結晶は一般に淡紫色を呈する。これは構造単位として存在するヘキサアクア錯イオン[Fe(H2O)63+に由来する。硫酸鉄(Ⅱ)の水溶液に硫酸と硝酸を加えて酸化し、硫酸カリウム硫酸アンモニウムを加えて濃縮すると、それぞれの鉄ミョウバンが得られる。カリウム鉄ミョウバンは乾燥空気中で容易に水分子を失い、結晶に濁りを生ずる。加熱により70℃で一水和物となる。アンモニウム鉄ミョウバンは加熱により150℃で11.5分子の結晶水を失い、230℃で無水和物となる。アルコールには溶けない。媒染剤に用いるほか、医薬品や試薬としての用途がある。

[鳥居泰男]


鉄ミョウバン(データノート)
てつみょうばんでーたのーと

鉄ミョウバン
 アンモニウム鉄ミョウバン
  Fe(NH4)(SO4)2・12H2O
 式量   482.2
 融点   39~41℃
 沸点   -
 比重   1.71
 結晶系  立方
 溶解度  44.15g/100g(水25℃)

カリウム鉄ミョウバン
  FeK(SO4)2・12H2O
 式量   503.2
 融点   33℃
 沸点   -
 比重   1.819~1.831
 結晶系  立方
 溶解度  1g/5g(水12.5℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鉄ミョウバン」の意味・わかりやすい解説

鉄ミョウバン
てつミョウバン
iron alum

鉄 (III) を含むミョウバンで,化学式は一般に MFe(SO4)2・12H2O 。MはK,NH4,Rb,Cs など。普通はカリウム塩をさす。淡紫色の立方晶系結晶。融点 33℃。室温で結晶水を失う。媒染剤として用いられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android