日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄ミョウバン」の意味・わかりやすい解説
鉄ミョウバン
てつみょうばん
iron alum
鉄を含むミョウバン、すなわちMFe(SO4)2・12H2O(Mは一価陽イオン)で表される複塩の総称であるが、通常はM+がカリウムイオンK+の場合、すなわちカリウム鉄ミョウバンpotassium iron alumをさす。しかし、化学工業方面ではM+がアンモニウムイオンNH4+の場合、すなわちアンモニウム鉄ミョウバンammonium iron alumをいうことが多い。結晶は一般に淡紫色を呈する。これは構造単位として存在するヘキサアクア錯イオン[Fe(H2O)6]3+に由来する。硫酸鉄(Ⅱ)の水溶液に硫酸と硝酸を加えて酸化し、硫酸カリウムや硫酸アンモニウムを加えて濃縮すると、それぞれの鉄ミョウバンが得られる。カリウム鉄ミョウバンは乾燥空気中で容易に水分子を失い、結晶に濁りを生ずる。加熱により70℃で一水和物となる。アンモニウム鉄ミョウバンは加熱により150℃で11.5分子の結晶水を失い、230℃で無水和物となる。アルコールには溶けない。媒染剤に用いるほか、医薬品や試薬としての用途がある。
[鳥居泰男]