化学式(NH4)2SO4。天然には,ベスビオ火山およびエトナ火山の昇華物としてマスカグニ石mascagniteが知られている。硫安の名で生産され,窒素質肥料の一種である。
無色斜方晶系の結晶。硫酸カリウム,硫酸ルビジウム,硫酸セシウムと同形。封管中における融点513℃。空気中では120℃から分解を始め,357℃で融解し,アンモニアを放って,硫酸水素塩と硫酸塩の混合物になる。
2(NH4)2SO4─→NH3+NH4HSO4+(NH4)2SO4
比重1.769(20℃)。屈折率1.5230。水100gに対する溶解度70.6g(0℃),76.3g(20℃),103.3g(100℃)。エチルアルコール,アセトン,二硫化炭素に不溶。水溶液は常温では加水分解がきわめて小さく中性であるが,煮沸するとアンモニアを失って酸性になる。硫酸酸性溶液からは水素塩の硫酸水素アンモニウムNH4HSO4(斜方晶系,融点147℃,沸点490℃,比重1.81)が晶出する。実験室ではアンモニア水に硫酸を加えて濃縮し,晶出させる。化学実験試薬,タンパク質の分画用試薬に用いられる。窒素肥料として日本では昭和20年代までの長いあいだ代表的存在であったが,その後しだいに生産,需要が低下し,尿素にその地位をゆずるに至った。製造のプロセスに種類や変遷が多く,表にまとめて示す。合成硫安はアンモニアと硫酸との中和発熱反応でつくられ,これらが硫安製造の基本である。反応槽中で濃縮,晶析によって,硫安の粗大結晶が得られるので,これを母液から分離する。合成硫安では製法上,遊離H2SO4が0.5%以下程度残留する。セッコウ硫安は資源の関係で日本で製造されたことはないが,塩基性で分解反応を行うため結晶性がよく,品質はすぐれる。硫安は,窒素肥料として速効性で,吸湿性も高くなく取り扱いやすいので,過去には大量に消費されていた。しかし硫酸根を含むため土壌の酸性化をもたらす欠点があり,また硫酸資源の適正利用という観点からも,尿素に比べて傍流的存在となっている。製法自体も他工業プロセス中に組み込まれ,その中での副生物,回収物として採取され,副生硫安,回収硫安と称して利用されているのが現況である。肥料公定規格ではアンモニア性窒素20.5%を保証する。
→窒素肥料 →硫安
執筆者:藤本 昌利+金澤 孝文
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硫酸のアンモニウム塩。硫安ともいう。窒素肥料としてもっとも重要なものの一つ。工業的には、硫酸にアンモニアを吸収させるなどの方法によって大規模に製造される。実験室的には、アンモニア水に硫酸を加えて中和し、濃縮すれば無色透明の結晶として得られる。空気中で加熱すると120℃から分解し始め、357℃でアンモニアを放って融解し、硫酸水素アンモニウムとの混合物に変わる。
2(NH4)2SO4→NH3+NH4HSO4
+(NH4)2SO4
水によく溶けるが、エタノール(エチルアルコール)、アセトン、二硫化炭素には溶けない。水溶液は常温ではきわめてわずかしか加水分解しないが、沸点では著しくなり、溶液は酸性を呈する。硫酸溶液から結晶させると硫酸水素アンモニウムが得られる。
[鳥居泰男]
硫酸アンモニウム
(NH4)2SO4
式量 132.1
融点 513℃(封管中)
沸点 ―
比重 1.769(測定温度20℃)
結晶系 斜方
屈折率 (n) 1.5230
溶解度 76.3g/100g(水20℃)
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(NH4)2SO4(132.14).硫安ともいう.アンモニア水に硫酸を加えて中和し,濃縮すれば結晶が析出する.無色透明の斜方晶系結晶.密度1.77 g cm-3.融点513 ℃(封管中).大気中では120 ℃ で分解をはじめ,280 ℃ で融解してアンモニアを発生し,硫酸水素アンモニウムと硝酸アンモニウムの混合物を生じる.水に易溶.水溶液は常温では中性で,沸点ではアンモニアを失って酸性となる.速効性の窒素肥料として大量に使用される.そのほか,タンパク質の塩析(硫安分画)に用いられる.[CAS 7783-20-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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