改訂新版 世界大百科事典 「銓選」の意味・わかりやすい解説
銓選 (せんせん)
quán xuǎn
中国において隋・唐から清朝までの間に実施された官員選考制度。銓衡選用の略。科挙制度以前では,官に登用されることは実際の職務につくことを意味したが,隋・唐以後の科挙合格者(宋以後の進士)は,最高位の数人を除き,単に官僚の有資格者にすぎず,すべて吏部の銓選を経て始めて官職が得られた。唐代の銓選は,身言書判の試験を伴い,吏部を牙城とした特権貴族の妨害で,下層出身の科挙合格者は官職を手に入れにくかった。宋以後,銓選は新進士の任用と,数万の官員の定期的人事異動を兼ね,その円滑な運用が皇帝の重要な責務となった。宋代は吏部の選用ポストと皇帝が宰相たちと直接任ずる堂選に分け,年功序列と人材抜擢のバランスをとった。しかしきわめて多くの人間とポストを組み合わせるため,とかく機械的に流れ,有力者から胥吏(しより)まで含めて情実が横行し,明代15世紀後半には抽選制まで導入された。なお清代には督撫が銓選の一部をにぎる外補の制も行われた。
執筆者:梅原 郁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報