日本大百科全書(ニッポニカ) 「鋼心アルミ撚り線」の意味・わかりやすい解説
鋼心アルミ撚り線
こうしんあるみよりせん
亜鉛めっき鋼線を撚り合わせ、その外側に硬アルミ線を撚り合わせた電線。鋼で補強したアルミニウムの電線という意味からACSR(aluminium conductor, steel reinforcedの略称)とよばれ、送電線に広く使用されている。1908年アメリカのアルコア社において開発され、日本では1920年(大正9)から製造されている。
銅に比べて導電率の劣るアルミニウムを使う理由は、第一に銅の約3分の1ときわめて軽いことによる。アルミニウムの導電率は銅の約60%しかなく、銅線と同じ抵抗にするには銅線の約1.6倍の断面積を必要とするが、それだけ太くなってもまだ軽く、しかも補強の鋼線によって引張り強さは大きくなるので、鉄塔間隔を長くできて経済的である。第二にはコロナ特性がよいことである。送電電圧が高くなると、電線の表面から電気(正しくは、電荷)が空気中に逃げ出そうとする性質があり、これをコロナ現象といって、電力の損失やラジオなど電気通信や放送の雑音の原因となる。コロナ現象は電線の外径を大きくすることによって防ぐことができる。
現在日本で運用されている超高圧送電の電圧は、275キロ~500キロボルトであり、このような超高圧になると、コロナを防ぐために、より太い電線が必要となる。1本の電線では改善しきれないので、太い電線と同じ効果をもつ多導体方式(三相交流の1相に2本以上の電線を使う方法)が使われるようになった。1970年(昭和45)以降、純粋なアルミニウムのかわりに、アルミニウムに微量のジルコニウムを添加した合金を用いることにより、耐熱性を高めた鋼心耐熱アルミ合金撚り線(TACSR:thermal-resistant aluminium-alloy conductor, steel reinforced)や鋼心超耐熱アルミ合金撚り線(UTACSR:ultra thermal-resistant aluminium-alloy conductor, steel reinforced)が大容量送電線に使用されることが多くなっている。
[佐久間照夫・大木義路]