テレビジョン映像を記録媒体に記録すること。主としてテレビの時差放送(アメリカのように国土が広く、地域間の時差が大きい場合には、同一プログラムをある時間を置いて放送する必要がある)、再放送、映像の保存、特殊効果、番組制作および研究資料作成などの目的で行われる。記録の方式には磁気録画、フィルム録画、ビデオディスク、DVDおよびブルーレイディスク(BD)などがあるが、いずれの方式も高密度化の方向で開発が行われてきた。
[金木利之・吉川昭吉郎]
記録媒体として磁気テープを用い、これにテレビ映像により周波数変調した搬送波を磁気ヘッドに加え、ヘッドのギャップに生ずる磁束によって、テープに記録、再生する方式で、ビデオテープレコーダー(VTR)とよばれる。VTRは信号処理の方式によって分けると、映像信号によって周波数変調した搬送波をビデオヘッドに加えてテープに記録するものと、映像信号をパルス信号に変換してから記録するPCM(pulse code modulationパルス符号変調)方式がある。
また、回転する円板に対し、放射状に移動する磁気ヘッドによってテレビの映像を記録、再生するものに磁気ディスク装置がある。これは同心円状に1回転1フレームのペースで記録するもので、記録容量は大きくないが希望の情報を呼び出すのに短時間で行える特長がある。ディスクへの記録はVTRのようにテレビ信号によって搬送波を周波数変調し、これを記録する。磁気ディスクにはアナログディスクとデジタルディスクがあり、アナログにはメッキディスク、フロッピーディスク、フェライトディスクなどがある。メッキディスクで記録、再生する場合、磁気ヘッドはディスクの表面から0.2~0.3マイクロメートル浮上して走行し、ディスクの回転を止めると、ヘッドはディスクの表面に接するようになる。また、フロッピーディスクはヘッドがつねに接触した状態で記録、再生が行われるため記録密度は大きい。デジタルディスクはコンピュータ用磁気ディスク装置から発展したもので、映像信号は、たとえばカラー副搬送波周波数の3倍の10.7メガヘルツでサンプリングしたのち、A/D変換器でPCM信号に変換して記録する。デジタルディスクはアナログに比較して信頼性が高く、画質も良好である特長がある。アナログディスクはスポーツ番組などで必要なスローモーションや逆転再生に用いられ、デジタルディスクはニュースやCMスポットに使用される静止画ファイルに用いられた。
[金木利之・吉川昭吉郎]
この方式にはキネスコープ・レコーディングkinescope recording、レーザー録画laser recording、電子ビーム録画electron beam recordingなどがある。キネスコープ・レコーディング(キネレコまたはキネコと略される)は輝度が高く、高精細度の映像が得られる特殊なブラウン管上のテレビ映像を、撮影機で映画フィルム上に記録するものである。ブラウン管によって方式を分けると、通常のブラウン管形式を利用した単管式と、赤・緑・青3本の単色ブラウン管上の画像をミラーで光学的にフィルム上に合成する方式とがある。電子ビーム録画におけるEVR(electronic video recording)は、1967年アメリカのCBSが開発した方式で、日本においてもNHKがほぼ同様なシステムを開発している。これは、テレビのカラー画像から輝度信号とカラー信号を得て、これらをそれぞれ輝度信号の電子銃とクロマ信号の電子銃を備えた装置に加え、幅8.75ミリメートルのフィルムの上に、一方は輝度信号、他方はカラー信号として1フレームを二つに分け、音声信号は両側にある磁気トラックにそれぞれ記録する。このようにしてマスターをつくり、これをプリントして得られたフィルムをEVR用のプレーヤーにかけて、カラー画像を再現するものである。アメリカの3M社はクロマビーム方式chroma-beam color-printを開発した。これは、カラー映像信号を赤・緑・青の3チャンネルフィールド順次信号に変換し、これを白黒フィルムに記録してマスターをつくり、さらにこれを16ミリのカラーフィルムに投写して、毎秒24こまのカラープリントを得るものである。
[金木利之・吉川昭吉郎]
1971年にアメリカのCBSで可能性が示され、日本ではNHK放送技術研究所により開発された。この方式は、ブラウン管を使用するキネスコープ・レコーディングの画質改善のために行われたものである。ブラウン管のかわりに赤・緑・青の3本のレーザーを使用し、カラーテレビ信号によりこれら三つのレーザービームを直接変調し、この光を偏向して撮影機により16ミリのカラーフィルムに高品質の録画を行う。この装置は光源部、光変調系、光偏向系、電気信号処理系および撮像機よりなっている。赤色光源にはヘリウム‐ネオンレーザー、緑色光源にはアルゴンレーザー、そして青色光源にはカドミウムレーザーが、それぞれ使用された。レーザー録画においてもフィルム録画と同様にテレビとフィルムのフレーム数の変換が必要で、これは撮影機とシャッターで行っていた。この方式はレーザー光によってカラープリントフィルムに直接録画するため、解像度や信号対雑音比が優れているばかりでなく、フィルムの価格がキネレコ方式の場合より相当軽減され、実用上の利点も多かった。
[金木利之・吉川昭吉郎]
映像・音声両信号を円板(ディスク)状媒体に光学的に記録し、これをプレーヤーにかけて再生するもの。VTRに比較してソフトが安価にできる特長がある。レーザーディスク(LD)、ビデオ・コンパクトディスク(ビデオCD)、DVD、BDなどがある。LDは直径30センチメートルのアナログ記録方式ディスクである。録画済みのビデオパッケージ専用で、ユーザーが自分で録画することはできない。一時期民生用ビデオパッケージとして広く使われたが、現在は使われない。ビデオCDはオーディオ用CDと同じ規格の光学ディスクにCDの物理規格を用いて映像を記録するものである。画質はVHSテープのそれと同程度であるが、デジタル記録であるためアナログ記録のVHSより安定している。DVD以前に過渡的に使われたが、DVDの出現によって日本では使われなくなった。しかし、DVDにつけられたコピーガード(複製禁止)やリージョンコード(地域限定)などの煩わしい制約がないため、一部の国ではいまなお需要がある。現在日本で使われているのはDVDおよびBDである。DVDとBDはいずれも直径12センチメートルのディスク媒体にデジタル記録方式で録画するものであるが、記録容量に違いがある。DVDが赤色レーザーを使い片面1層の標準的なディスクで、4.7ギガバイトの記録容量であるのに対し、BDは青紫色レーザーを使い、片面1層の標準的なディスクで25ギガバイトの記録容量をもつ。そのため、BDはHD(ハイビジョン)の高画質録画や、長時間あるいは多数タイトルの録画に適している。民生用としては、いずれも録画済みのビデオパッケージおよびユーザーが自分で録画できる未録画のブランクディスクの形で供給されている。詳細は「ビデオディスク」の項目を参照のこと。
[吉川昭吉郎]
テレビ信号などのような画像情報の電気信号を記録・保存し,必要時にこれを再生する技術を録画という。記録は情報に対応したエネルギーを物質(記録媒体)に加え,エネルギーをとりさった後にも残るような変化を物質に与えることを基本としており,光,磁気,電子,機械などのエネルギーが用いられる。
テレビ画像は1枚が36万7500画素の大量の情報から構成されており,これを動画として送るテレビ信号は毎秒4×106サイクル程度の高速の変化をする信号であるので,録画は以上の条件に加えて超微細な変化を高速で媒体に与えたり,高速でこれを検出(読出し)することが必要となり,このための技術がいろいろと開発されている。
録画技術の最初は1935年のベルリン・ラジオ博覧会に出展されたブラウン管による光の走査で写真フィルムに画像を記録したものといわれている。これはキネスコープレコーディング(略してキネレコ)として実用化され,今日でも使用されている。
この技術の延長線上として,高密度化のためにブラウン管による光の走査のかわりに電子ビームやレーザービームの走査が導入され実用化されている。電子ビーム録画は,67年に映像情報を家庭にフィルムで配布するシステム用としてEVRの名称でアメリカのテレビ放送会社CBSが開発している。この映像情報配布システムの思想は後のビデオパッケージへと発展することになる。レーザービーム録画はテレビ信号から映画フィルムを制作するのに使用される。とくに,高品位テレビによる映画制作に有効である。
磁気記録による録画装置がビデオテープレコーダーである。VTRはアメリカにおける東部西部間のテレビ放送時差解消を目的に1950年代当初から研究が世界各地で行われ,56年にはアメリカのアンペックス社が放送用の実用機を開発した。これは当時唯一の実用録画方式であったキネレコより画質がよかったため,短期間に普及するとともに性能・機能の大幅な改善が進みテレビ番組制作・送出に欠かせない装置として発展した。
VTRはその後,日本の電子機器業界の努力により家庭用が開発され,今日の普及をみるに至った。
VTRは磁気録音機の延長線上の技術として発展したが,円盤(レコード)録音機の流れとして,ビデオディスクがある。ビデオディスクは70年にテレフンケン,テルデック,デッカの3社により機械的記録・再生方式のものが発表されたのを契機として,ビデオパッケージとして世の注目をあび,続いてレーザー記録・再生方式,静電容量再生方式などが実用化された。またディジタル技術の進歩によりビデオテープレコーダーやビデオディスクはディジタル圧縮信号を記録できるようになり,さらに小型化・高画質化が達成されている。
執筆者:横山 克哉
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