鎚鍱像(読み)ついちょうぞう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鎚鍱像」の意味・わかりやすい解説

鎚鍱像
ついちょうぞう

鍱とは金属の薄板のことで、鋳造した型の上に銅板などをあてがい、槌(つち)でたたいたり曲げたりして原型と似た浮彫り風の像につくったもの。別々につくった前面と背面をあわせて、丸彫り像のようにしたものもある。同じ像を短時間にいくつもつくることができる特色をもつ。飛鳥(あすか)、奈良時代(7~8世紀)のわが国では中国六朝(りくちょう)末・隋(ずい)・唐の影響を受けて「押出し仏」が流行したが、現在ではこれと同じ意味の中国における用語と解されている。しかし中国の遺例をみると、同じ表現法の像が複数あって型を用いたことは確かだが、細部の仕上げには微妙な差違があり、また裏面から見ると打ち出した部分の奥が広がり、口で絞られた形になっている。もし最後まで型を用いていれば、これでは型が抜けなくなってしまうわけで、鎚鍱像は仕上げの段階でほとんど型を使用せずに槌起(ついき)したことが推定できる。奈良時代のわが国の文献にも「押出」または「打出」とはあっても「鎚鍱」の語の使用例がなく、技術用語のほとんどを中国の用法に倣っていた当時としてはきわめて異例のことである。これらの諸点から判断して、鎚鍱像は日本の押出し仏の技法とは兄弟の関係にはあるが、はるかに高度で複雑な別種の技法によったものと解される。

[佐藤昭夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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