打出(読み)ウチデ

デジタル大辞泉 「打出」の意味・読み・例文・類語

うち‐で【打(ち)出】

打ち出すこと。作り出されたもの。
打ちでのきぬ」に同じ。
藤壺の上の御局みつぼねに、つぶとえもいはぬ―どもわざとなくこぼれ出でて」〈大鏡師輔

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精選版 日本国語大辞典 「打出」の意味・読み・例文・類語

うち‐だし【打出】

  1. 〘 名詞 〙
  2. うちだすこと。
  3. うちいで(打出)
  4. 武具の一種。指物(さしもの)の名。
  5. 模様など裏から打って表面へ浮き出させるのに用いる型。打出し細工。また、そのような細工を施したもの。
    1. [初出の実例]「天井はエナメル塗りの打ち出しブリキ板で張られ」(出典:アリア人の孤独(1926)〈松永延造〉一)
  6. 江戸時代、検地によって地積の増加すること。従来より短い竿を使って検地したときや、隠田の発見などにより生じた。農民はその分の年貢を増徴されたが、寺社や給人の場合は増加した土地は没収された。打出し高。出目(でめ)竿延(さおのび)。増分(ましぶん)。〔地方凡例録(1794)〕
  7. 一日の興行の終わり。劇場や相撲などで、終演と同時に大太鼓を打ち出すところからいう。はね。転じて、物事を終えること。お開きにすること。
    1. [初出の実例]「うち出しの頃あわ雪はくずをねり」(出典:雑俳・柳多留‐二(1767))
    2. 「座敷のうち出(ダ)しとしよふ」(出典洒落本・青楼五雁金(1788)一)

うち‐いで【打出】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 金、銀、銅などをたたいて箔に延ばすこと。
    1. [初出の実例]「薄(はく)うち。なんりゃうにてうちいでわろき」(出典:七十一番職人歌合(1500頃か)三一番)
  3. 打出の衣(きぬ)。また、打出の衣をおし出すこと。
    1. [初出の実例]「大宮の女房、寝殿の南より西までうちいでしたり」(出典:栄花物語(1028‐92頃)御裳着)

うち‐で【打出】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 打ち出すこと。また、作り出されたもの。うちいで。
  3. うちいで(打出)の衣(きぬ)満佐須計装束抄(1184)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「打出」の意味・わかりやすい解説

打出
うちだし

検地によって地積、石高(こくだか)を増加させること。出目(でめ)、竿余(さおあまり)ともいう。『地方凡例録(じかたはんれいろく)』によれば、「古検の村新検になれバ、間竿(ケンザオ)の寸尺差(タガ)ふに付、打出しの出歩(デブ)あり」とある。1594年(文禄3)島津領の太閤(たいこう)検地は石高57万石余を確定し、1591年(天正19)の高21万石余に対し6割強の打出をみている。江戸幕府成立期、幕府は従来の間竿6尺3寸を6尺1寸に短縮し、越後(えちご)国(新潟県)頸城(くびき)郡箱井の検地では文禄(ぶんろく)年間(1592~96)の高46石余に対し、その5割にあたる打出を行っている。そのほか、打出は、隠田(おんでん)の摘発や新田開発によっても生じ、これらは農民の年貢増徴をもたらし、百姓一揆(いっき)の原因になる場合もあった。

[北島万次]

『大石慎三郎校訂『地方凡例録』(1969・近藤出版社)』

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