日本大百科全書(ニッポニカ) 「押出し仏」の意味・わかりやすい解説
押出し仏
おしだしぶつ
銅板と銅製鋳物の原型とを圧着して、仏像などの形を浮彫り風に打ち出したもの。7、8世紀ごろ流行した技法で、鎚起(ついき)像とでもよぶべきものである。「押出し」という語は古く奈良時代から使用され、「打出し仏」ともいった。その製法に2種あると考えられ、一つは銅板の裏から印を押すように雄型原型を打ち込む法で、数センチメートルどまりのものを、いくつも打つのに用いる。第二は大形の押出し仏に使い、雄型原型の上に銅板を置き、上から鎚(つち)で打ち出す。この手法は、原型のくぼみに力を強く入れるなどの技巧によって、複雑精巧な型どりが可能であり、図様の一部だけを打ち出すといったこともできる。押出し仏の周囲には釘(くぎ)留めの穴があるので、厨子(ずし)内に留めるなどして礼拝したものと思われる。遺品としては東京国立博物館の法隆寺献納宝物中の10面をはじめ、法隆寺、唐招提寺(とうしょうだいじ)などの各寺に分蔵され、原型が正倉院(しょうそういん)などに9面ほど残っている。押出し仏の特殊な用例として、像の前面、背面をそれぞれ打ち出して、これを最中(もなか)の皮のようにあわせて一体の像としたものが前記の法隆寺献納宝物中にある。
[佐藤昭夫]