長夫(読み)ながぶ

精選版 日本国語大辞典 「長夫」の意味・読み・例文・類語

なが‐ぶ【長夫】

〘名〙 長期にわたる夫役(ぶやく)荘園領主荘官地頭などが、長期にわたって麦刈、田草取りなどの農業夫役や荷物運搬などの労働夫役に農民を使役すること。
※近衛家本追加‐弘長元年(1261)二月二〇日「一 長夫事 百姓等有其歎、一向雖之、鎌倉祗候之御家人等、還又可其愁

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改訂新版 世界大百科事典 「長夫」の意味・わかりやすい解説

長夫 (ながぶ)

日本の中世社会において,封建領主によって農民に賦課された長期間にわたる夫役。荘園領主は,〈都へ人を上せてつかはせ参らするを,ながふとは申なり〉(《物ぐさ太郎》)のように,農民を地方の荘園からの年貢などの荷物運搬や,領主邸宅の警衛,雑役勤務などに駆使した。長夫は大きな負担であったから,農民たちは,〈京都の長夫を召仕せらるるの事,往古まったくもって,かくのごときの御例これなし,百姓等歎申すの愁訴なり〉(《東寺文書》)と,これの軽減を要求して闘った。地頭などの在地領主も,田起し,算取りなどの農作業に,長期にわたって領内の農民を使役した。農民らは,これを地頭の非法として鎌倉幕府に訴えたので,幕府は,農繁期における労働力収奪を制限した。室町・戦国期において,内乱状況が継続したときには,守護戦国大名は陣夫などと称して,長期間,農民を戦場へかり出すこともあった。
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