間脳腫瘍(読み)かんのうしゅよう

改訂新版 世界大百科事典 「間脳腫瘍」の意味・わかりやすい解説

間脳腫瘍 (かんのうしゅよう)

脳腫瘍一種で,間脳と間脳が囲む第三脳室を侵す腫瘍を総称していう。おもな腫瘍には,頭蓋咽頭腫,脳室上衣腫ependymoma,上衣囊胞colloid cyst,松果体部腫瘍である未分化胚細胞腫や奇形腫teratomaなどがある。未分化胚細胞腫は視床下部の正中部にもよく発生し,これはトルコ鞍上部未分化胚細胞腫suprasellar germinomaと呼ばれる。間脳腫瘍では共通して,頭痛や頭蓋内圧亢進症状(意識障害や視力障害など)がみられ,頭蓋咽頭腫やトルコ鞍上部未分化細胞腫など視床下部を侵す腫瘍の場合は,肥満,脳下垂体前葉機能低下症,尿崩症多飲,体温調節障害などの症状がみられる。これは,間脳,とくに視床下部には自律神経中枢が存在し,また脳下垂体ホルモンの分泌調節因子がつくられているからである。これら間脳腫瘍のうち,おもなものは頭蓋咽頭腫,未分化胚細胞腫などである。

胎生期の頭蓋咽頭管の遺存細胞から発生する先天性の腫瘍で,小児に多く小児腫瘍の10~15%を占めるが,成人にもまれではない。頭痛,視力障害,内分泌症状などを呈する。

大型の上皮細胞と小型の類リンパ球からなり,若年男子に好発する。放射線照射療法が功を奏する。トルコ鞍上部未分化胚細胞腫では,尿崩症を初期症状とし,視力障害と脳下垂体前葉不全症状を起こすことが特徴である。
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