内科学 第10版 「頭蓋咽頭腫」の解説
頭蓋咽頭腫(脳腫瘍各論)
Rathke囊(craniopharyngeal duct)の遺残上皮から発生したと考えられる上皮性の腫瘍で,全脳腫瘍の3.4%を占める.腫瘍はトルコ鞍上部から鞍内にかけて存在するが,10%程度の症例では鞍内に限局する.8割以上の腫瘍は囊胞を伴い,囊胞の内容液はモーターオイル様である.一般的には小児に発生する腫瘍であるが,成人症例も決してまれではない.
臨床症状
視力・視野障害,下垂体前葉の機能低下症(小児例では下垂体性小人症が問題となる),体温低下や尿崩症などの視床下部症状をみる.視野障害に関しては,下垂体腺腫とは異なり左右非対称で不規則な欠損パターンを呈する傾向にある.術前から尿崩症を呈する症例は,約10%程度である.
診断
頭蓋単純撮影上,トルコ鞍は皿状(saucer-like pattern)を呈する.頭蓋単純撮影,CTで鞍上部に散在する石灰化を認めるが,その発現率は小児例ほど高い.MRIでは鞍上部に囊胞を伴う腫瘍を認め,囊胞壁は著明に造影される(図15-14-5).一部の症例では,腫瘍は囊胞を伴わず充実性のこともある.
治療
腫瘍全摘出により治癒が期待できるが,周囲組織との癒着が強く一部腫瘍を残さざるを得ない場合も少なくない.全摘出が達成されなかった症例では,術後に放射線治療を行うのが一般的である.[新井 一]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報