関尹子(読み)カンインシ

デジタル大辞泉 「関尹子」の意味・読み・例文・類語

かん‐いんし〔クワン‐〕【関尹子】

中国時代のしんの伝説的な思想家本名尹喜いんき函谷関かんこくかんを守る役人であったので、つけられた名。その思想は「荘子」などに断片的に残っているのみで、著書「関尹子」は後世偽作という。生没年未詳。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「関尹子」の意味・読み・例文・類語

かんいんしクヮンインシ【関尹子】

  1. 中国、道家書名。九編一巻。老子が西遊した際の函谷関の長であった尹喜の作とされるが、後世の偽作という。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「関尹子」の意味・わかりやすい解説

関尹子
かんいんし

中国上代の思想家。またはその著書の名。人物としての関尹子の名は、『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』や『荘子(そうし)』に静寂を尚(たっと)んだ人物としてみえるが、その経歴は明らかでない。ただ『史記』「老子伝」によると、関令(かんれい)尹喜(いんき)(関所役人の尹喜)なる人物がおり、老子は、彼の要請によりその書を著して授けたという。そして、この関令尹喜がすなわち関尹子であるとされることから、関尹子とは老子の一番弟子であり、『老子』を伝授された人物として伝えられるようになった。

 書物としての『関尹子』は、その名に仮託して後世につくられたもの。1世紀につくられた書籍目録である『漢書(かんじょ)』「芸文志(げいもんし)」にその名のみえることから、前漢代にあったことは確かであるが、現行本『関尹子』1巻は、仏教道教の思想を含むものであって、唐末五代(10世紀)以後の偽作であるといわれる。なお道教では関令尹喜のことを文始真人(ぶんししんじん)とよぶことから、本書は『文始真経』とも称する。

[楠山春樹 2015年12月14日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「関尹子」の意味・わかりやすい解説

関尹子
かんいんし
Guan Yin-zi

中国の思想書。『史記』老子伝にみえる関令の尹喜の著とされるが,実は唐末五代の偽作であり,唐末の道士杜光庭の作という説もある。1巻。神仙方技について,仏教,儒教を混合して説く。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android