偽作(読み)ぎさく

精選版 日本国語大辞典 「偽作」の意味・読み・例文・類語

ぎ‐さく【偽作】

〘名〙
① にせものをつくること。特に、絵画や書などを、別の人がその作者の作に似せて、あるいはまねて作ること。また、その作品。まがいもの。偽造贋作(がんさく)
実隆公記‐明応元年(1492)一二月一六日「明疑抄〈為家卿作〉、是偽作之物也之由存之」
※授業編(1783)一「孔聖人の御父へ上られし書なりと云ひ伝ふ。後人の偽作(ギサク)は論なし」 〔後漢書‐隗囂伝〕
② 著作者以外の者が、著作権者の承諾なしに、著作物複製・翻訳・興行・映画化・放送などをして、著作権を侵害すること。旧著作権法での用語
※著作権法(明治三二年)(1899)三〇条「既に発行したる著作物を左の方法に依り複製するは偽作と看做さず」

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デジタル大辞泉 「偽作」の意味・読み・例文・類語

ぎ‐さく【偽作】

[名](スル)
本物に似せて作ること。特に、書画などを本来の作者の作品に見せかけて作ること。また、その作品。贋作がんさく
著作権者に無断で著作物の複製・発行などをすること。
[類語]模造偽造贋作贋造代作変造複製作り物偽物紛い物食わせ物如何様いかさま擬古コピーイミテーションレプリカフェイク

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普及版 字通 「偽作」の読み・字形・画数・意味

【偽作】ぎさく

いつわり作る。〔後漢書、隗囂伝〕王天地を慢し、~天命に矯(いつは)り託し、符書を僞作し、衆庶を欺惑し、上を震怒せしむ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「偽作」の意味・わかりやすい解説

偽作
ぎさく

文学作品において,作者以外の別人が作者の作と見せかけてつくる作品,またはその行為。古代叙事詩,中国の兵書などで作者が仮託されたものが多いが,その真作者が実証された場合,その作品は偽作とされる。作品が商品化されて売られる場合には著名な作者の名をかりて出版される偽作も多く,江戸時代の西鶴本がその例で,イギリスの W.アイアランドのシェークスピアの偽作は有名。法律的には,著作権者以外の者が著作権者の許諾を得ないで著作物を複製することをさし,著作権法にも偽作に関する条項がある。

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世界大百科事典 第2版 「偽作」の意味・わかりやすい解説

ぎさく【偽作】

真正な作品に対するもの。贋作,にせものとも呼ぶ。
[美術]
 狭義には,収集者や鑑賞者を欺く目的で,意図的に偽造された美術作品を指す。たとえば,オランダのハンス・ファン・メーヘレンの偽造したフェルメールの《エマオの巡礼》(1937年ロッテルダムのボイマンス美術館に購入され,その判明は1945年)や,近年では,エルミール・ド・オルリによって偽造され,フェルナン・ルグロによって転売されたメドー・コレクションの大量の近代美術の作品などはこの例である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「偽作」の意味・わかりやすい解説

偽作
ぎさく

贋作

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世界大百科事典内の偽作の言及

【偽書】より

…室町時代初めの学僧玄慧は,《庭訓(ていきん)往来》《遊学往来》《喫茶往来》など一連の往来物の作者に擬せられているが,当時天台僧都で朱子学を伝え,禅にわたっていたその名声によるものであろう。江戸時代にはますます激しくなるが,そのうち大事件は,館林広済寺住職潮音と浪人永野采女の偽作《先代旧事本紀》72巻で,志摩の伊雑宮(いぞうのみや)神主の依頼で天照大神の本拠を伊勢から志摩に乗っ取る謀略であった。潮音らは1682年(天和2)に処罰された。…

【レプリカ】より

…これに反し,原作者によらず,他者によって行われた同一作品の制作をコピー(模写,模作)と呼ぶ。このほか,いくつかのオリジナル作品の様式,モティーフなどを混合させ同一作品に合成したパスティーシュpastiche(フランス語),オリジナル作品と見せかける偽作(贋作),オリジナル作品を別個の思想的脈絡の中で引用するパロディ,同一作者による,オリジナル作品のバリエーションを意味するバージョンversionと区別される。 レプリカの制作動機は,大別して3種ある。…

※「偽作」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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