改訂新版 世界大百科事典 「集計問題」の意味・わかりやすい解説
集計問題 (しゅうけいもんだい)
aggregation problem
〈集計の問題〉ともいう。国民経済の現状や過去の経験的状況を把握し,さらに将来の予測をたてる場合,物価指数や国民総生産(GNP)など,統計的に扱いやすい経済変数を用いた分析(巨視的(マクロ)分析)が行われている。しかし物価指数やGNPなどは,それ自体として存在するものではない。実際,現実の経済では財の数に応じて非常に多くの価格が存在するが,物価指数は,これらの価格を一定の方法で平均したもの,つまりは一種の〈集計量aggregates〉である。同様にGNPも,多数の企業の行う生産活動を一定の方法にしたがって集計したものである。巨視的分析ではこのほかにもいろいろな集計された経済変数(巨視的経済変数とよぶ)が扱われるが,いずれにしても,それらが集計量である以上,個々の財の価格などの集計される経済変数(微視的(ミクロ)経済変数とよぶ)によって説明されて初めて経済学的意味をもつことになる。だが,この集計という操作は必ずしも容易ではない。というのは,個々の微視的経済変数を単純に合計できない場合や,たとえそれが可能であったとしても,結果として得られた巨視的経済変数がもはや微視的経済変数によっては説明のつかないものとなることがあるからである。このような微視的経済変数から巨視的経済変数という集計量を構成する際に生ずるさまざまな問題を総称して,〈集計問題〉といい,まだ解決されない問題が存在するのが現状である。なお集計問題はL.R.クラインらによって取り上げられた。
→マクロ経済学
執筆者:佐藤 寿博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報