日本大百科全書(ニッポニカ) 「マクロ経済学」の意味・わかりやすい解説
マクロ経済学
まくろけいざいがく
macroeconomics
国や特定経済圏といった巨視的(マクロ)視点から、政府、企業、家計という経済主体の動きを明らかにし、貧困や失業を減らし、人々が豊かに暮らしていくための解決策を考察する学問。国内総生産(GDP)、所得、投資、貯蓄、消費、通貨供給量、利子率、物価、失業率、為替(かわせ)相場、国際収支などを変数にとって最適な経済モデルを設定し、分析・実証する手法をとる。経済学で、個々の人々や個別企業の微視的(ミクロ)動きから分析するミクロ経済学と並ぶ大きな柱となっている。
古典派経済学では、供給が自ら需要を生み出して市場は均衡し、完全雇用が実現されるというセーの法則が信じられていた。しかし世界恐慌後、イギリスの経済学者、J・M・ケインズは1936年に『雇用・利子および貨幣の一般理論』を発表。市場に任せただけでは失業が発生し、政府による適切な市場介入(財政支出と減税)で有効需要を創出する必要があると訴えた。このケインズ革命以降、1970年代までケインズ経済学がマクロ経済学の主流をなし、各国の経済・財政政策に大きな影響を与えた。
だが石油危機を経て、ケインズ経済学に基づく総需要管理政策に疑問が呈される。1970年代にアメリカ人経済学者R・E・ルーカスは裁量的な財政・金融政策は家計や企業の合理的予想(期待)で相殺されて無効となるという合理的期待形成仮説を発表。アメリカ人経済学者のE・C・プレスコットらの研究「Rules Rather than Discretion:The Inconsistency of Optimal Plans」(裁量よりもルール――最適計画の非適合性)も加わり、新しい古典派New classical economicsがマクロ経済学の主流となった。その後、市場の失敗が起こる要因(情報の非対称性、賃金や物価の硬直性など)を重視し、これを是正するマクロ政策を再構築しようとするニュー・ケインジアン経済学new Keynesian ecomonicsが台頭、アメリカのオバマ政権などに大きな影響を及ぼしている。
[編集部]