雑物替(読み)ぞうもつがえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「雑物替」の意味・わかりやすい解説

雑物替
ぞうもつがえ

江戸時代の長崎で、唐船との間で行った代物替(しろものがえ)(物々交換取引)の一つ。棹銅(さおどう)で取引するのを原則とした定高取引とは別の取引口を設けて俵物(たわらもの)・諸色(しょしき)で行った。1715年(正徳5)在余売(ありあまりうり)と称する取引が、同年のいわゆる正徳(しょうとく)新例で新設され、俵物(煎海鼠(いりこ)、干鮑(ほしあわび)、鱶鰭(ふかのひれ))で取引することにされたが、1729年(享保14)この名称を改めて雑物替といい、口船(くちぶね)(南京(ナンキン)船、寧波(ニンポー)船)は銀高30貫、奥船(おくぶね)は35貫あるいは40貫の限度で、銀高の10分の4を芝吹(しばふき)銅(代銀、100斤=70匁の定め)で渡し、10分の6を俵物(代銀、長崎会所買入値の8割下げ)で渡すことにした。その後、諸色(昆布(こんぶ)、鯣(するめ)、茯苓(ぶくりょう)、鶏冠草(とさかぐさ)、所天草(ところてんぐさ)など)を加えた。1791年(寛政3)の改正商法でも雑物替はなお存続しているが、1811年(文化8)の商法改正の際、他の取引口に統合、廃止されたようである。1837年(天保8)の改正商法では、すでにみられない。

[山脇悌二郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「雑物替」の意味・わかりやすい解説

雑物替 (ぞうもつがえ)

江戸中期の長崎貿易の取引方法の一つ。実質はそれまでの代物替(しろものがえ),有余売と同じで,1729年(享保14)から唐船30艘,銀4000貫目の定高(さだめだか)取引後,1艘平均銀30貫目分の雑物替がなされた。対価として4割を銅(定高取引は8割が銅),6割を海産物で渡すもので,今魚町に雑物替会所が設けられたが,33年定高取引(定高貿易法)に吸収され,雑物替会所も長崎会所の一部局(払方会所)となった。
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