煎海鼠(読み)いりこ

改訂新版 世界大百科事典 「煎海鼠」の意味・わかりやすい解説

煎海鼠 (いりこ)

ナマコ類の煮干し品。きんこ(光参),ほしこともいう。主としてクロナマコマナマコバイカナマコなどで作るが,キンコも用いる。現在ではおもに中国料理に用いられるが,古くは日本でも重要な食品で,《令義解(りようのぎげ)》にその名が見え,《延喜式》によると若狭以下6ヵ国から貢納されていた。中国では海参(ハイシエン)というが,これはチョウセンニンジンに似た薬効があるとされたことによる。製法内臓を抜き去り,希薄食塩水で1時間ほど煮熟して放冷し,天日または火力で乾燥する。製品歩留りは約5%。水でもどしてから調理するが,組織が緻密なので吸水には長時間を要する。まず,水に入れて火にかけ,沸騰したら火からおろして冷ます。これを1日1~2回,そのつど水を変えて1週間前後行う。その間,ある程度軟化した時,腹をさいて残存する内臓などを洗い落とす。もどしたいりこは,独特の歯ごたえと舌ざわり以外には,ほとんど味もにおいもない。したがって,調味には上質のだし汁と,調和のとれた調味料類の配合を要し,スープ,いため煮などにすることが多い。
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百科事典マイペディア 「煎海鼠」の意味・わかりやすい解説

煎海鼠【いりこ】

ナマコから作る乾製品。内臓を除き,食塩水で煮たて,乾燥したもの。古くは日本でも重要な食品であり,《令義解(りょうのぎげ)》や《延喜式》にもその名が見える。中国ではハイシェン(海参)といい,炒(いため)物,煮物酢の物などに用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の煎海鼠の言及

【俵物】より

…いりこ,干しアワビ,フカのひれなどの海産物を俵に詰めて輸送したために起こった呼称。近世長崎貿易において中国貿易で銅代替輸出品として重要な地位を占めていた。…

【中国料理】より

…薬用ニンジンと同じ滋養効果があるということからこの名がついた。日本では同様のものをいりこという。とげのあるのはマナマコからつくり,ないものはキンコやフジコからつくる。…

【ナマコ(海鼠)】より

シロナマコ(イラスト)やコモンイモナマコなどは,体の後部が尾のように細くのびている。マナマコはよく酢の物にして食べ,煮て干したいりこは〈海参〉と呼ばれて強精剤にされ,またキンコ(イラスト)も別名フジコと呼ばれ一時は大量に乾製品がつくられた。〈このわた〉は,内臓を塩づけにしたものであり,〈このこ〉は卵巣を塩づけにして乾燥したものである。…

【煮干し】より

…魚貝類を煮て乾燥させたもの。イワシ類,イカナゴ,貝柱,アワビ,エビ,ナマコなどを材料としてつくられるが,ナマコのそれはいりこ,イワシ類,イカナゴなどの稚魚でつくったものは白子(しらす)干し(白子)と呼ぶ。単に煮干しといえばふつうは小型のカタクチイワシやマイワシを食塩水で煮たのち天日乾燥したものを指す。…

【マナマコ(真海鼠)】より

…ナマコ綱マナマコ科の棘皮(きよくひ)動物。日本各地に分布し,潮間帯から水深30mくらいまでの浅海にすむ。体長20~30cm,体幅6~8cmの円筒状。体色には変異があって外洋の岩礁にすむものは濃淡の褐色と栗色の斑紋があって俗にアカコと呼ばれる。また内湾の砂泥底にすみ,暗青緑色から黒っぽいものはアオコと呼ばれ,極端に黒いのはクロコとも呼ばれる。背面から側面には大小の円錐形のいぼ足がほぼ6縦列に並ぶ。腹面は赤みを帯び,管足は3縦帯に密生している。…

※「煎海鼠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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