日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子債権」の意味・わかりやすい解説
電子債権
でんしさいけん
手形や売掛債権など企業間の金銭の受け払いを電子データで管理し、インターネットやファックスで決済できる新たなペーパーレスの債権。法的な正式名称は「電子記録債権」。2008年(平成20)12月に施行した電子記録債権法(平成19年法律第102号)によって導入された。これまで書面でやり取りしてきた手形や売掛債権に比べ、作成・交付・保管コストを低く抑えられるうえ、紛失、盗難、誤って複数取引先に渡す二重譲渡などのリスクを軽減できる。分割して一部債権を第三者へ譲渡することも可能である。期日前に現金にかえることができ、印紙税もかからない。電子債権を受け取った中小企業が金融機関に申し出れば簡単に現金化できるので、中小企業の有力な資金調達手段になると期待されている。電子債権の利用企業は2012年10月末に約5万社に達し、債権残高は1兆円を超えている。
国が認定する電子債権記録機関に、債権者と債務者の双方が発生記録の請求を行い、債権者名、債務者名、支払い額、支払い期日などの情報を磁気ディスクなどで記録することで、電子債権が発生する。電子債権を譲渡するには、譲渡人と譲受人の双方が電子債権記録機関に譲渡記録の請求を行う。また債務者口座から債権者口座へ全額払込みが行われた場合、電子債権は消滅する。2003年に政府のIT戦略本部で電子債権導入の必要性が打ち出され、2007年6月に電子記録債権法が成立した。その後、みずほ、三井住友、三菱東京UFJの3メガバンクグループがそれぞれ電子債権記録機関を設け、おもに大手企業が取引先に発行する形で電子債権を取り扱ってきた。2013年2月には、全国銀行協会が全額出資した電子債権記録機関「全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)」が稼動した。これには2013年6月時点で大手銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、農林中央金庫、商工組合中央金庫など約500の金融機関が参加しており、電子債権の利用が地方企業などへ一段と広がるとみられている。
[編集部]