2008年(平成20)10月、株式会社商工組合中央金庫法に基づいて設立された全額政府出資の特殊会社。略称は「商工中金」。そもそも商工中金は、1936年(昭和11)中小企業等協同組合のための政府系金融機関として設立された。しかし、2005年に出された「政策金融改革の基本方針」において「預金、手形割引等民間金融機関と同様のフルバンキング機能であることから、(政策金融分野からは)撤退する」「所属団体向け組合金融であることからも、本来参加者が相互扶助の精神に基づき、メンバーシップ制で行うものであり、政策金融である必要はない」という方針が決まった。この方針に基づき、2006年の「政策金融改革に係る制度設計」に沿って、おおむね2013~2015年の間に完全民営化(政府保有株式のすべてを処分)することを目的として設立されたのが、現在の株式会社商工組合中央金庫である。しかし、商工中金が設立された後に発生したリーマン・ショック(2008)および東日本大震災(2011)によって、中小零細企業に対する資金繰り支援における金融システムの脆弱(ぜいじゃく)性が明らかになった。そこで経済危機時の安定的な資金供給に万全を期すために、2015年5月に当該法を改正し、完全民営化の具体的な時期を定めず、当分の間、危機対応業務の的確な実施のために必要な株式を政府が保有することとなった。このような理由により、商工中金は危機対応業務を実施することを「責務」として規定した。加えて、その実行性を確保するため危機対応準備金への出資期限の延長、商工中金への事業計画・業務報告書等の提出の義務づけ等を定めている。とはいえ、完全民営化を断念したわけではなく、市場の動向等を勘案しつつ、適切なタイミングで商工中金の株式を処分できるよう、具体的な期限にかえてできる限り早期に処分することも義務として定めている。2015年時点で、資本金2186億円(うち政府保有株式1016億円)、資金量9兆9642億円(うち預金5兆0191億円、譲渡性預金1116億円、債券4兆8335億円)となっている。本店所在地は東京都中央区八重洲2-10-17。
[前田拓生 2016年3月18日]
1936年11月,商工組合中央金庫法に基づき,中小企業等協同組合,商工組合,輸出組合など,中小企業によって組織された団体に対する金融の円滑化を目的として設立された特殊法人。略称の商工中金で呼ばれることも多い。債券(商工債券)の発行が認められており,これがおもな資金源となっている。ほかには組合からの預金,政府の出資金などがある。所属団体の互選により総代が選出され,総代による総代会が意思決定機関となっている。役員は主務大臣(大蔵大臣および通産大臣)によって任命される。設立時から1945年の敗戦まではいわゆる戦時体制下で,商工中金は経済統制機構の下部組織となった商工組合の金融面を担当することとなった。商工中金の本来の目的である,中小商工業者の組合金融の円滑化のための活動は,戦後に始まったといえる。政府の中小企業対策の整備とともに,積極的に中小企業者への金融に乗り出した。53年には全都道府県への営業店の設置が完了した。また中小企業関係の協同組合等の各種団体の立法化が進み,環境衛生同業組合(1957),酒造組合(1958),商店街振興組合(1962)などの所属資格団体の追加が行われた。2008年10月株式会社に改組された。なお貸付残高9兆8244億円,資本金5142億円,うち政府出資78.8%(2004年3月)。
→中小企業金融
執筆者:竹内 文則
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