改訂新版 世界大百科事典 「電子冷却」の意味・わかりやすい解説
電子冷却 (でんしれいきゃく)
electronic refrigeration
種類の異なる二つの導体を直列につなぎ,直流電流を流したとき,導体のつなぎ目で,熱の発生または吸収が起こる現象をペルチエ効果といい,ペルチエ効果を利用した冷却を電子冷却という。導体として金属を用いると,熱伝導がよいため,熱の発生や吸収が起こっても,二つのつなぎ目の間の温度差は小さくなってしまう。そこで,導体として熱伝導率のあまり高くない半導体を使用し,冷却の効果を得ている。図のように,n形およびp形半導体の一端を金属板で共通につなぎ,n形半導体からp形半導体の方向に電流を流す。すると,金属板では吸熱が起こり,各半導体のもう一方の金属端子では発熱が起こる。つまり,前者の金属板では冷却が行われる。半導体としては,ビスマス,アンチモンとテルルまたはセレンの合金がよく用いられ,n形半導体にするためには,ドナー不純物,銅,銀,セレン,テルル,ハロゲンなどが,またp形半導体にするためには,アクセプター不純物に鉛,リチウム,タリウムなどが添加される。電子冷凍は,圧縮冷凍に比べ機械的な可動部分が少ないため,振動や騒音がほとんどなく故障も少ない。冷却の効率は低いため,エネルギー的には必ずしもすぐれていないが,小型化できるので電子部品の局部的な冷却や小型の恒温槽などに用いられる。
執筆者:河東田 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報