熱効率ともいう。科学技術分野で効率という場合は普通、熱機関の効率のことをさし、熱がどれほど有効に仕事に変えられるかを表す数である。熱機関は、高熱源から熱量を吸収し、低熱源へ熱量を放出し、その差だけの仕事を外部へなすような操作を繰り返し行う。各種のエンジンはすべて熱機関である。熱機関が高熱源から吸収する熱量をQ2、低熱源へ放出する熱量をQ1とすると、この熱機関の効率ηはη=W/Q2=(Q2-Q1)/Q2で定義される。ただしWはこの熱機関が外部へなす仕事である。
理論上は、カルノー・サイクルを次々と繰り返せば、一つの熱機関が実現することは明らかであって、この理想気体を作業体とする可逆カルノー・サイクルの効率ηはη=(T2-T1)/T2で与えられる。ここに、T2、T1はそれぞれ高熱源、低熱源の絶対温度である。さらに、カルノーの定理によると、同じ高熱源、同じ低熱源の間に働く熱機関では、不可逆的なものの効率は可逆的なものの効率よりかならず小さい。しかし、熱機関の効率をあげることは、実用面においてはきわめて重要であるが、われわれが実際につくりうる熱機関は、かならず不可逆的なものであるから、その効率はいくら努力しても(T2-T1)/T2より小さい。この極限値は、たとえば
T2=1273K(1000℃),
T1=273K(0℃)
のときには、0.79である。
[沢田正三]
機械から得られる有効な仕事が,それを得るために機械に加えたエネルギーに対して占める割合をいう。一般に,エネルギーと仕事の収支についてはエネルギー保存則が成り立つから,有効な仕事に変えられず損失となってしまう部分があれば,効率の値は1以下となる。現実には,加えられたエネルギーをすべて有効な仕事として取り出すことはできないので,実際の機械の効率は1より小さい。熱エネルギーを力学的仕事に変換する熱機関については,それに加えた熱に対する得られた有効仕事の割合を熱効率thermal efficiencyと呼んでいる。熱から仕事への変換過程については,熱力学の第2法則によって制約を受け,高温の熱源(温度T1)から得た熱Q1を完全に仕事に変えることは不可能で,変換過程で必ず熱の一部Q2を低温の熱源(温度T2)に捨てなければならず,熱効率は(Q1-Q2)/Q1=(T1-T2)/T1となる。このため,火力発電所を構成する熱機関あるいは大型船のディーゼルエンジンのような最も熱効率の高い熱機関でも,その値は50%まではゆかない。これに対して,力学的エネルギーをもとに仕事を発生する水車や電気エネルギーを仕事に変える電動機の効率は,90%あるいはそれ以上に及んでいる。
執筆者:田中 宏明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…電気工学用語。電気機器においては,有効に利用されずに失われる電力および動力を損失といい,損失がわかれば効率efficiencyは次式で算出される。損失には銅損,鉄損,漂遊負荷損があり,回転機ではさらに機械損がある。…
…経営学では,一定の目的を達成し,期待される結果をもたらすために行われる諸活動の評価基準の意味で効率という。工学や物理学ではefficiencyを効率と訳し,能率はモーメントの訳語とされる。 経営学では能率を,目的もしくは結果の達成度合を示す有効性effectivenessの概念とほぼ同義的に使われることもあれば,それと区別して使われることもある。能率は,ある目的ないし結果を達成するためにどれほどの努力・時間・経費がかけられたかが重要であるのに対して,有効性ではその点がほとんど顧慮されない。…
…自然界に起こる過程は,摩擦,熱伝導など不可逆過程が多く,したがって自然界(宇宙)を孤立系とみなせばエントロピーの総和はその極大値に向かって増加していることになる。可逆変化不可逆変化
[エントロピーと熱機関の効率]
エントロピーの概念を用いると,理想的な熱機関の効率ηを計算することができる。最大効率をもつ理想的な熱機関の効率ηは,エネルギー保存則と熱力学の第2法則より,エントロピーの変化をなるべく少なくして,外にとり出す仕事を最大にする過程,すなわち可逆過程に対する効率として求められる。…
…電気工学用語。電気機器においては,有効に利用されずに失われる電力および動力を損失といい,損失がわかれば効率efficiencyは次式で算出される。損失には銅損,鉄損,漂遊負荷損があり,回転機ではさらに機械損がある。…
…経営学では,一定の目的を達成し,期待される結果をもたらすために行われる諸活動の評価基準の意味で効率という。工学や物理学ではefficiencyを効率と訳し,能率はモーメントの訳語とされる。…
※「効率」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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