電子線回折装置(読み)でんしせんかいせつそうち(その他表記)electron diffractometer

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子線回折装置」の意味・わかりやすい解説

電子線回折装置
でんしせんかいせつそうち
electron diffractometer

平行度のよい電子線を試料に当てて、透過あるいは反射電子線の回折像から試料の原子配列状態を評価する装置。電子線回折の専用装置は市販されているものは少なく、目的に応じて製作されることが多い。一般には電子顕微鏡が利用されることが多い。

 電子銃から出た数十キロボルトの電子線は第1収束レンズによって電子源の縮小像をつくる。さらに第2収束レンズによってその像が蛍光板上に結ばれる。第2収束レンズの後方に試料を置いて回折像を蛍光板上で観察したりフィルムに記録したりする。電子線回折像の分解能は、回折スポットの間隔に対する電子源の像の大きさで決まる。分解能をあげるためには第1収束レンズで結ばれるスポットを小さくすればよいが、そのかわり回折像の明るさは減少する。回折像の大きさ、あるいは回折スポットの間隔はカメラ長(試料と蛍光板との距離)に比例するが、通常は回折像の大きさを数センチメートルにするために、カメラ長は数十センチメートルにする。

 電子顕微鏡を用いた場合にも観察の基本原理は変わらない。電子顕微鏡像観察の状態から中間レンズの焦点距離を変えて対物レンズの焦点面ピントを合わせることによって、電子顕微鏡像の任意の領域からの電子線回折像(制限視野回折像)を得ることができる。電子顕微鏡像の観察を必要としない場合には、試料を回折試料室に移せばカメラ長が数メートルに及ぶ高分解能回折が可能である。

 結晶の表面構造観察のためには1億分の1パスカル程度の真空度をもつ低速電子線回折LEED)装置や反射高速電子線回折(RHEED)装置が開発され、長周期構造の研究などに利用されている。

外村 彰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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