改訂新版 世界大百科事典 「電産型賃金体系」の意味・わかりやすい解説
電産型賃金体系 (でんさんがたちんぎんたいけい)
電産の前身,電産協が1946年の産別十月闘争によって獲得した賃金体系のことで,以後約10年間,日本の最も代表的な賃金体系として広く普及した。日本資本主義史上,労働組合の手で作成された唯一の賃金体系であることに歴史的意義がある。その特徴は,(1)賃金の決定要素を勤続年数や家族数などの客観的指標に求め,経営者による査定権の介入を排したこと(年功的平等主義),(2)賃金総額の約80%を〈生活保障給〉で充当するように構成し,企業の生産性に左右されない最低生活を保障したこと(生活給思想),(3)企業の枠をこえて同一産業労働者の生活保障を志向したこと(産業別横断賃金論),にある。この意味において,この賃金体系は,(1)査定権の行使による能力主義論,(2)〈パイの論理〉による企業支払能力論,(3)個別賃金論に立脚する賃金体系の確立をめざす資本家陣営から激しい攻撃を受けつづけ,1952年の電産・炭労ストにおける電産の敗北とともに,衰退の道をたどった。
→賃金体系
執筆者:河西 宏祐
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報